中国支配強化が反発招く

二極化する香港 識者インタビュー(6)

「社会民主連戦」主席・立法会議員 梁国雄氏(上)

 急進民主派である社会民主連戦の梁国雄立法会議員に香港政局の現状と中国の影響について聞いた。(聞き手=香港・深川耕治、写真も)

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 梁国雄 1956年3月、香港生まれ。原籍は中国広東省増城。社会主義政治団体「四五行動」のリーダー。04年に立法会議員に初当選。12年に民主派政党「社会民主連戦」主席。過激な政治行動で3回投獄。長髪の風貌から「長毛(ロン毛=ロングヘア)」の愛称で知られる。

 ――7月1日の民主化デモや立法会で一貫して梁振英行政長官の辞任を求めているが、香港政局にとって一体、何が問題か。

 1997年の中国返還以後、中国政府は香港をますますコントロールしようとしていることによって反発を買っている。低所得者層の生活改善が進まず、自由度が狭まり、行政長官選挙などで一部にしか選挙権が付与されていないことが大きい。

 日本でも大挙して中国人観光客が訪れて“爆買い”し、不動産を買い占めたり、ビジネスをしている。香港も同じで、実際に中国共産党政権の元に入らなければ分からないことが数多くある。

 中国は01年にWTO(世界貿易機関)加盟後、大量に人民元を発行して香港に中国資本が流入し、香港株式市場の時価総額の約半分は中国資本だ。当然、中国政府の香港への政治経済上の発言力は強まり、慎重かつ巧妙に対処している。

 ――香港が中国主権下に入ったことでデメリットが大きいということか。

 米国は日本を経由してアジア政策で1950、60年代に多大な影響力を与えたが、日本は米国領ではなく、その後、日本独自の外交をしている。香港は中国領の一部なので中国政府は香港に対して強硬に指示できるところが大きな違いだ。

 ――昨年9月末から79日間続いた雨傘革命運動と呼ばれる香港の学生を中心とする幹線道路デモが収束して以降、香港の民意はどう変わってきているか。

 雨傘革命運動は失敗とまで断定できないが、決して成功とは言えないだろう。香港市民は今、少し迷っている。行政長官選挙の普通選挙案を廃案にしたが、果たして良かったのか。考え込んでいる状態だ。親中派にとっては一人一票の普通選挙を実現できなかったことへの反省と対処、民主派にとっては雨傘革命運動が香港政治史上、成功例として刻めなかったことへの反省と対処が求められている。