広がる「同性パートナーシップ制度」

特報’17

 同性カップルを「結婚に相当する関係」と認める「同性パートナーシップ条例」が東京都渋谷区で成立してから2年が経過した。これが契機となり、同区を含め5自治体が同様の制度を導入した。来月には、札幌市が政令指定都市として初めてそこに加わる。しかし、「市長の思想運動」にすぎないとの声が出ており、憲法が保障する思想・信仰を侵害する恐れもある。(森田清策)

幌市が来月、全国6番目に導入
「市長の思想運動」との批判も
兵庫・宝塚市は申請者「ゼロ」

 「市民生活を守るべき市長が、市民の要望でないことをやっているのは、思想活動ということですよ」

札幌市役所

6月に、政令指定都市として初めてパートナーシップ制度を導入する札幌市役所

 こう語るのは、兵庫県宝塚市(中川智子市長)の市政に詳しい地方議員。同市は昨年6月、パートナーシップ制度を導入した。しかし、4月初め現在、同性カップルであることを認める書類の交付申請者は「ゼロ」。

 同市人権男女共同参画課は「市民の要望で始めたのではないので、みんながカミングアウトしやすい社会をつくるという、公的利点が知られていないのではないか」と語る。同市は現在、同性愛者などの性的少数者(LGBT)に対する職員の理解を深める研修や出前講座などで、住民の“意識改革”を進めている。

 一方、来月から、制度をスタートさせるのが札幌市(秋元克広市長)。もともとは、4月からの導入を目指していた。しかし「同性婚ではないかとの誤った認識があって、反対意見が届き続けている。周知の期間が必要ということで、6月からになった」(市男女共同参画課)という。導入されれば、全国の自治体で6番目、政令指定都市としては初めてとなる。

 制度の先駆けとなった渋谷区が条例を基に導入(渋谷方式)したのに対して、他の自治体は「要綱」を定めて、パートナーシップ宣誓書を発行する。渋谷区の条例制定のあと、世田谷区(保坂展人区長)がこの方式で導入したため「世田谷方式」と呼ばれる。

 要綱は市長決裁でできるため、住民からの要望とは関係なく、市長の肝いりで導入される。また、発行される書類には、法的効力がないことから、どの自治体も性的少数者に対する住民の意識を変えるためのテコとして、同制度を導入している。さらに、保坂区長、中川市長とも元社民党国会議員の経歴を持つ。こうした共通点をみると、パートナーシップ制度導入による住民の意識改革の実態は「市長の思想運動」であることが浮き彫りとなる。

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 各自治体が研修会、講習会などの「啓発活動」に力を入れるのはこのためだが、多くの問題点を抱える中でも、特に懸念されるのは行政による個人の思想・信仰と保護者の教育権の侵害だ。

 人間の性に関する価値観は人それぞれで、個人や家庭に委ねられるべきものだ。宗教によっては、同性間の性行為を「罪」とし、無宗教でも否定的に考える人は多い。したがって、行政が住民の意識改革を進めれば、憲法が保障する思想・信仰の自由の侵害につながるケースも出てくる。

 また、同性カップルの関係をまだ判断力の弱い子供に教えることを保護者の承諾なく行えば、保護者の教育権を侵害することになる。「多様性の尊重」「人権尊重」を謳(うた)いながら、パートナーシップ制度の拡大はその理念に逆行する事態を招く恐れがある。

 さらに、行政側は「同性婚ではない」と説明するが、制度が「同性婚の合法化」を求める運動を後押しするのは確実だ。LGBT活動家は、異性カップルと同性カップルは「平等」だから、同性婚を禁じるのは「差別」と訴えており、運動の最終目的は同性婚であることは間違いない。

 したがって、パートナーシップ制度の是非をめぐる議論は、結婚を核とした、伝統的な家族を守るのかどうかという国家的課題に関わることから、自治体の首長の決裁によって制度が拡大する現状は、憂慮すべき事態と言える。