正月から子育てするレズ・カップル紹介するNHK「あさイチ」特集

◆「同性婚」容認に誘導

 東京都渋谷区で昨年、「パートナーシップ条例」が施行したことで、いわゆる「LGBT」(性的少数者)という言葉がメディアに頻繁に登場するようになった。その影響で、レズ(L)、ゲイ(G)、バイセクシャル(B)、トラスジェンダー(T)を意味する新用語を耳にしたことのある人はかなり増えたはずだが、その最大の“功労者”はNHKである。

 Eテレの「ハートネットTV」が何年も前からLGBT特集を続けた上、昨年は「週刊ニュース深読み」「サキどり」「クローズアップ現代」「おはよう日本」など、総合テレビでも大々的に取り上げるようになって、NHKの性的少数者応援はますます過熱している。

 今年もまだ松飾りが外れないうちに、「あさイチ」(6日放送)が「こどもがLGBT 親ならどうする?」と題して特集を組んだ。当事者たちをスタジオに呼んで、理解されない苦しみに耳を傾けるのはいい。誰にだって人権はあるのである。問題なのは信憑(しんぴょう)性に疑問があるにもかかわらず「LGBTは13人に1人。身近な存在なんです」と、前述した番組で何度も繰り返した説明をまた繰り返し、「同性婚」容認に誘導しようとする姿勢が強くなっていることだ。

 「13人に1人」というのは電通がインターネットで行った調査の結果で、学術的な信頼性は低い。リポーターは「信じられないという声もありました」と逃げ道を作ったが、ならば本当に性的少数者はそれだけ多いのか、調査したらどうか。それをせずに、この数字を繰り返し使うのは「性的少数者はこんなに多いのだよ」と、視聴者に刷り込みたいからなのだろう。

◆原因には踏み込まず

 問題はそればかりではない。キャスターの井ノ原快彦は同性愛者であることを打ち明けた子供を理解できない親について「もちろん子供を愛しているのだろうけど、知識がないゆえに、やっぱり偏った意識になっているのかな」と、LGBTを受け入れられない理由を知識の欠如に矮小(わいしょう)化してしまった。

 普通の人がLGBTに嫌悪感を持つのは、知識がないという理由からだけではない。理由はどうあれ、同性同士の性行為に生理的に反発する人は多いのである。それを知識不足とするなら、同性愛とは何かを分かるように説明すべきだろう。それをしないで知識不足と決め付けるなら、それこそ偏見である。

 有性生殖という自然の摂理の中で存続する人間が子孫を残すために、同性愛を忌避するのは、これまた自然の摂理と言える。それなのに、なぜ同性愛や性同一性障害の人が存在するのか。こうした生理学的な問題を専門家を交えて探求すれば、興味深い番組になったろうが、なぜかそこには踏み込まない。せいぜい環境によるものか、性的指向は変わるのかなど、精神科医が表面をなぞって終わりだった。

 また、性的少数者に対する差別について、井ノ原は「人として付き合っていけたら一番いいと思う。ゲイであろうと、レズビアンであろうと、良い奴(やつ)もいれば、悪い奴もいる」と、言わずもがなのコメントでお茶を濁した。いくら朝の情報番組とはいえ、これではキャスターの名に値しない。それを言うなら、LGBTという概念も「カミングアウト」(性的指向の表明)も必要はなく、人として尊敬される生き方をすればいいだけのことだ。

◆視聴者への刷り込み

 さらに、不可解だったのは、LGBTに優しい国として同性婚を法律で認めるスウェーデンを取り上げたこと。同性婚したレズビアン・カップルが精子提供によって、2人合わせて3人の子供を産んで育てているケースを取材。そして「差別されたことは一度もない」と、同性カップルが子育てすることは当たり前になっている同国を自画自賛する声を紹介したが、キャスターもゲストもレズビアン・カップルが精子提供で子供を出産することの是非については突っ込んだコメントはなかった。

 最初は性的少数者の悩みから始まったが、最後は子育てする同性婚カップルにつなげた意図はどこにあったのか。視聴者の反発を考えると、「同性婚を認めて、レズビアン・カップルの出産が当たり前になるようにすべきだ」とは、正面切って言えないが、視聴者に同性婚容認を刷り込もうという思惑があるとしか考えられない。NHKが熱心にLGBT特集を組む狙いを探れば、結局はそこにたどり着くのである。(敬称略)

(森田清策)