陸自配備が焦点 宮古島市長選スタート
南西諸島防衛に影響大、翁長陣営が県内選挙初の分裂
任期満了に伴う宮古島市長選が15日告示され、4人が立候補した。22日に投開票される。軍事的拡張を続け不当な海洋進出を進める中国の船舶がわが国の領海を頻繁に侵犯する中、陸上自衛隊の実戦部隊配備の賛否が主要な争点となっている。その結果は尖閣諸島をはじめとする南西諸島防衛に直結する重要な選挙である。(那覇支局・豊田 剛)
条件付きで容認/下地晃 住民投票を検討/真栄城
自衛隊誘致訴え/下地敏彦 断固反対の姿勢/奥平
政府は昨年3月、日本最西端の与那国島に陸上自衛隊の沿岸監視隊を配備した。それに続き、大規模災害や離島攻撃の際に初動対応を担う警備部隊や地対空、地対艦ミサイルの部隊が宮古島に配備される予定となっている。700~800人の規模だ。政府は中期防衛力整備計画に基づき、2018年度末までの配備を目指している。
その宮古島の市長選には、届け出順に元県議の奥平一夫(67)=民進推薦、3選を目指す現職の下地敏彦(71)=自民推薦、医師の下地晃(63)=社民、沖縄社会大衆推薦、前市議の真栄城徳彦(67)の各氏が立候補した。前回は無投票となったため8年ぶりの市長選となる。
下地敏彦氏は自民推薦に加えて、地元出身の下地幹郎衆院議員(維新)の支持も受ける。自民党沖縄県連の照屋守之会長は、「本人の実績と国、自民県連との連携、4年間の期待を込めて推薦した」と強調。陸上自衛隊誘致の他、大型クルーズ船の専用バース、スポーツ観光交流拠点施設(全天候型ドーム)、博物館などの建設、下地島空港(宮古島市)の活用を公約に掲げている。
下地氏は昨年6月、自衛隊配備を受け入れる考えを早々と表明した。すでに市議会で配備の同意が得られているため、住民投票は必要ないと強調する。候補者の中で、最も自衛隊配備の推進が明確なことから、自民党本部も下地氏の再選に全力を注ぐ。
同じ保守系の立場で出馬する真栄城氏は、自衛隊配備に関しては容認の立場だが、市民に情報を開示した上での住民投票を検討している。地元出身の保守系県議が選対本部長に就任し、中道保守系市議6人と共に支援している。真栄城氏は現市政の運営が不透明だと指摘。「行政の説明責任、法令順守、情報開示の確立」を重視し、一般会計予算の見直し、福祉と教育政策の充実を公約に掲げる。
公明県本部(金城勉代表)は、保守が分裂している状況を踏まえ自主投票とすることを決めた。
一方、翁長氏を支持する革新陣営も分裂状態に陥っている。県内の選挙では初めての“仲間割れ”だ。
翁長氏を支持する「オール沖縄」陣営は、候補者選考委員会で下地晃氏の推薦を決めた。ところが、下地氏が「オール沖縄とは是々非々の立場で取り組む」と表明すると、一部の革新系支持者らから「選考過程が不透明だ」「下地氏の自衛隊配備容認の姿勢が認められない」などと批判が噴出。その結果、自衛隊配備反対の奥平氏に出馬要請が行われ、本人が快諾した。翁長氏は9日に宮古島入りし、奥平氏の応援演説をした。
これについて、ある自民党県議は、「もともと日米安保も自衛隊も容認すると言っている知事が、自衛隊反対の候補を応援するとは、ポピュリズムの極みか、よほど共産党に配慮したかどちらかだろう」と厳しく批判した。
奥平氏を主に支えるのは共産党、県議会のリベラル左派会派「おきなわ」だ。総決起大会には、安慶田(あげだ)光男副知事が登壇し、「(翁長氏は)大いなる決断をした」と評価した。出陣式には玉城デニー衆院議員(自由)、「おきなわ」の県議、共産市議らが参加した。
奥平氏は、有事の際に標的になるという理由で自衛隊配備には断固反対の姿勢。下地島空港活用事業の推進、環境保全などを公約に掲げる。
下地晃陣営は「『オール沖縄』で正式に選ばれたのは晃氏であって、『オール沖縄』の代表である知事が別の候補を応援することは認められない」と不満を噴出。社民、社大は、今後、選挙や県政運営で知事と敵対することもあり得ると警告している。照屋寛徳(社民)、仲里利信(無所属)の両衆院議員が下地晃氏を支援する。
同氏は、旧町村部の産業振興により人口減少に歯止めをかけると強調。国際的な人材育成を視野に入れた専門学校誘致を掲げている。自衛隊配備については、「重装備であれば配備を認めない」という条件付き容認の立場で、住民投票を視野に入れている。
=メモ= 宮古島市長選 (届け出順)
奥 平 一 夫(67)=無新(民進推薦)
下 地 敏 彦(71)=無現(自民推薦)
下 地 晃(63)=無新(社民、社大推薦)
真栄城 徳 彦(67)=無新












