運転手、コック常駐の不破邸 筆坂氏

筆坂元日本共産党ナンバー3と田村自民党政務調査会審議役が対談(11)

自民党には別荘なんてない 田村

 田村 共産党の皆さんは皆平等で同じものを食べているのかなと思ったら、兵本達吉さんが月刊誌『WILL』に、共産党の熱海の研修所では中央常任委員より幹部会委員の方がおかずが一品多いと書いている。その上の常任幹部会委員になるとさらにもう一品多くなるという。その上の、当時委員長の宮本顕治となれば一番大きくて、一番新鮮な鯛(たい)じゃなくてはいけないから、ボディーガードを熱海の魚屋に買いに走らせたという。帝国ホテルの主任シェフをしていた人が、「組織内の身分の違いでおかずの数が変わる世界は共産党だけだ」と嘆いていた。昔のソ連では、ノーメンクラツーラといって「赤い貴族」というのがあったが、実際にどうなのか。

不破哲三前議長

講演会で、野党共闘の意義について語る共産党の不破哲三前議長3月16日、那覇市

常幹委員だけが使える別荘

 筆坂 僕が常任幹部会委員になった時は、党本部に食堂があり、一般の党員もヒラの中央委員も一緒なんだが、常任幹部会委員だけ別の食堂があり、違うメニューだった。しかし、これは良くないと僕が提案する前になくなった。それと幹部だけの別荘があった。僕も夏休みだったと思うけれど、当時、幹部会秘書室があって、「明日から休みになるけど、連休の宿を取っていないな。どこか空いていないかな」と言ったら、「それなら伊豆の別荘を使ったらどうですか」と言われた。建物は建て売りみたいなものだが、伊豆に2軒あって、使えるのは常任幹部会委員だけだった。

 田村 自民党は別荘なんてない。

 筆坂 そりゃあそうでしょう。共産党というのは幹部をものすごく大事にする。党大会決定には幹部政策なんていう項目が必ずある。共産党というのは先ほど言ったように上から作られている。要するに幹部さえ守れば党は滅びないという考えがある。これは多分レーニン以来のことだ。

 田村 自民党と全く逆だね。自民党というのは、応援してくれる人たちを大事にしなくてはという気持ちがある。

 筆坂 私は「幹部会委員とか常任幹部会委員というのをやめたらどうか」と提案したことがある。「他の党のように幹事で良いじゃないか、常任幹事とか」と。それに「統一戦線なんていう言葉をやめたらどうだ」と言ったけれど、却下された。

 それから不破哲三の家がすごい。すごく遠い。中央高速の相模原インターで降りて、党本部から1時間半くらい走って、走って、山の中にある。不破夫妻は80歳を越した老夫婦で、二人とも車を運転できない。ボディーガードがいて、運転手が常駐している。コックさんも常駐している。日本の政党の党首であんな生活ができるのは不破だけだ。

不破さんと井上ひさしさんとの対談をまとめた『新日本共産党宣言』の中で、「明治天皇の人形が不破さんの部屋にいっぱいあった」と井上さんがびっくりしていたが、実際どうか。

 筆坂 すごい。郷土人形など土人形を集めるのが趣味なんだ。一棟は、書庫とその人形が何千とある。

 田村 中国の秦の始皇帝の兵馬俑みたいだ。

 筆坂 そのほかに住まいが一棟ある。コックや運転手やボディーガード用の小さい家が一つあって、そこで寝起きしている。

 田村 それは党員みんな生活が大変な中、党員が払った党費で賄っているんでしょう。

トップになったら辞めない

 筆坂 そう。人件費だけですごい。自分で雇うとしたら無理だ。だから、辞められない。共産党はいっぺんトップになったらなかなか辞めない。宮本顕治が辞めたのは89歳だ。不破哲三が「お願いだから辞めてください」と言って、やっと辞めた。

 田村 だから、16年もやって誰も辞めろなんて言わないんだ。自民党なんか長いから辞めろという声が出て途中で辞めたりする。

 筆坂 自民党なんて長くなくても辞めろとなるじゃないか。(笑い)