「国民連合政府構想」に打算も 筆坂氏

筆坂元日本共産党ナンバー3と田村自民党政務調査会審議役が対談(9)

トップのセリフと全部が一緒 田村

 筆坂 民主連合政府が現実味があったのは70年代だけ。なぜかというと日本社会党があったから。実際に、東京、名古屋、京都、大阪で革新首長ができた。だから、現実味は一応あった。でも、社会党がなくなった段階で、民主連合政府なんて全く展望はない。今、志位さんが「国民連合政府構想」という暫定政府構想を出して、懸命に民進党に擦り寄っているが、ある意味、必死なんだ。ただし打算もあると僕は思う。国民連合政府が本気でできるとは絶対に思っていないと思う。シングルイシュー(単一の政策)で戦争法廃止をやったら、その内閣は解散総選挙をすると言うんだから。そんな無責任な政治ができるわけがない。

志位和夫委員長

都道府県委員長会議の結果を踏まえ、記者会見する共産党の志位和夫委員長=2月22日午後、東京都渋谷区の同党本部

 田村 それは差し当たって一致できる目標だ。

調子いい時に暫定政府構想出す

 筆坂 共産党は、暫定政府構想というのを4回ほど出している。日米安保条約改定があった1960年。衆議院の議席は1人だ。共産党が暫定政府構想を発表するときというのは特徴がある。次の選挙に躍進しそうなときなのだ。80年代もそう。今もそうだ。今回の参議院の改選は3人しかいないが、絶対躍進する。6人でも倍増だから。そういう調子が良いなと思うときに、暫定政府構想を出している。今度の場合は、「SEALDs」(シールズ)がマスコミにうんと取り上げられたが、18歳選挙権も導入されることだし、この連中と連携すれば若者票が来るだろうという計算がある。だから共産党候補を積極的に降ろして野党共同をリードしようとしている。だから、「国民連合政府構想」ができるとまともに思ったら、それはバカだ。それほど共産党はバカではないと思う。

 田村 憲法の問題でも、憲法とは権力・政府を縛るものだとしか言わない学者がいる。しかし、国民の生命と財産を守るのが憲法の究極の目的で、国家の役割は一体何か、そこが一番大事。ヨーロッパは変な王様がいたから、これを倒して国民を守るために憲法で権力を縛るというのは分かるけど、やはり日本は日本なんだ。なぜ「天皇」があるか。そこなんだ。

 筆坂 私は、共産党はそこから学び直せと言いたい。やはり日本の歴史を学び直せ。そうしないと受け入れられなくなる。いくら柔軟路線だと言ったってそんなのごまかされない。

 田村 資本主義を批判し大企業を批判したら、グローバルな時代だから大企業に増税したらどんどん外に出て行く。それでは経済政策は成り立たないわけでしょ。

 筆坂 マルクス・エンゲルスで現在の経済運営は絶対できない。そもそも、そんな経済理論ではない。

 田村 でも、志位さんははっきり言っている。マルクス・エンゲルスの本来の姿が生き生きと蘇(よみがえ)って21世紀の党の綱領に結実したと。今までいろいろ言っていたものが問題になったから、やはり原点に戻るのだと。

党員の半分以上が綱領読まない

 筆坂 今の綱領は不破さんが全部書いた。その草案も僕は読んだ。もちろん、常任幹部会で出た意見を入れ、些末(さまつ)だが若干の修正はしている。しかし、基本はすべて不破さんが作った。この綱領ができて何年も経(た)っているが、いまだに党員の半分も読んでいない。下から生き生きとした討論を積み重ねて党大会が開かれ決まったというが、綱領を学べ、綱領を学べと号令を掛けながら今も読んでいない党員が半分以上もいる。

 田村 共産党の人たちは、トップが言うセリフと全部、一気通貫、一緒だ。

 筆坂 全くその通り。共産党の人は良く勉強しているというが、それは間違い。「赤旗」に書いてあることをそのまま言っているだけの話だ。その点、「赤旗」は良くできているので、地方議員も同じことを言っている。憲法9条は世界の宝だとよく言うよ。反対したのは共産党だけだ。歴史を知ると、恥ずかしい。