ものすごい書き換えする共産党 筆坂氏

筆坂元日本共産党ナンバー3と田村自民党政務調査会審議役が対談(2)

コミンテルン日本支部がルーツ 田村

 田村 志位委員長の『綱領教室』という3冊の本を読んでみた。なるほど、批判しようと思えばそういう箇所が満載なんだなと気が付いた。例えば、戦前の話で、共産党は1922年の7月15日に創立している。その年の11月から12月にコミンテルン、共産主義インターナショナル第四回大会で正式に日本支部として承認された。これが日本共産党のルーツであり、それは変わっていないわけだ。

田村重信氏

田村重信氏

 志位さんはこの本で、自分たちの政党は、綱領をものすごく大事にする政党なんだ、民主党なんか綱領がないじゃないかと言って批判している。自分たちは綱領を大事にし、綱領にあることを着実に実行するということが書いてあり、なるほどなと思った。そういう意味では、結局、目指すべき社会は、社会主義、共産主義社会だ。その考え方は、自然と反米になってしまう。そこをきちんと踏まえていくことが大事だなと思った。

 筆坂 ただ、共産党の歴史観というのは、まさにアメリカの歴史観だ。

 田村 途中からね。占領政策になったらそれを今度は利用した。

 筆坂 今、ポツダム宣言を一番評価しているのは、何といっても日本共産党だから。

 田村 そういうことだ。はっきりしているのは、日本の戦争はすべて昭和天皇の名で起こしたんだと。戦争の問題でも、天皇への態度が問われるんだということを明確に言っている。「天皇の専制政治打倒」というのが、日本共産党の基本的な考え方だ。東京裁判の問題について三つの問題点があると言っている。

 一つは、最大の戦争犯罪の天皇を免罪したこと。二つ目は、連合国の戦争行為の問題点を不問にしたこと。広島、長崎の原爆投下やソ連によるシベリア抑留や強制労働。三つ目は朝鮮や台湾などへの植民地支配の責任。朝鮮人の「強制連行」、慰安婦を含む植民地犯罪。共産党が慰安婦の問題で、わあわあ言っているのは、共産党の歴史観があってやっていることだ。そういうことをきちっと押さえておくことが大事だ。

筆坂秀世氏

筆坂秀世氏

 筆坂 今言われた2番目は そんなことを言ってなかった。これは新しい(志位さんの)本でしょ。最近だからそういうふうに言っている。だって原爆投下なんて批判していないんだから。それどころか、核エネルギーは大変なもので、これがあれば不毛な原野でもいっぺんに肥沃(ひよく)な土地に変えることができる、なんてやっていたわけだから。

 例えば、日本の原水爆禁止運動は、広島、長崎に原爆投下されてから起こったのではない。ビキニ環礁で第五福竜丸が被爆して以降だ。広島、長崎に原爆が投下されたからと言って、共産党や当時の社会党が、これはアメリカの戦争犯罪だと騒いだかというと一切なかった。だから、これは後知恵だ。何しろ占領軍を解放軍だと規定していたのだから。

 田村 結構、研究していくと、原点が大事だ、原点が大事だ、といいながら、途中で相当変わって、ご都合主義になっているということがかなりある。

 筆坂 ものすごい書き換えをやるんだね。

「天皇制」が共産党の最大の敵 田村

「君主制」削除は不破氏の知恵 筆坂

 田村 筆坂さんの論文の中に「日本共産党の手のひら返し」とあるが、最初言ってたのともう全然違う。例えば、かつては河野談話を批判していたが、今はどうかとか。かつては村山談話を全然評価しなかったが、今はどうかとか。日韓国交正常化にも反対していたが、今はどうかとか。そもそも改憲政党だった。「天皇制打倒」なわけだ。社会主義、共産主義と相いれないのでそれが最大の敵なんだから。体制転換というのは、まさにそこにある。

憲法改正が共産党の原点に

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志位和夫著『綱領教室』(全3巻)

 世界の憲法になく日本にしかない日本国憲法の一番の肝は、第一章「天皇」なんだ。それをなくすには憲法改正しかない。基本的に共産党には、憲法改正が原点にある。その心は天皇をなくす、ということだ。そこはきちっと言っていかないと、みんなだまされると思う。急に、今年の通常国会の開会式に出席したりしてね。

 筆坂 これは、不破哲三の知恵だ。前の綱領では「君主制」と位置付けていた。「君主制」だったら打倒しないといけない。「君主制」でないようにしたらいいじゃないかと。これは、不破さんから直接聞いたが「君さ、前の綱領で『君主制』と言ったからまずいんだよな」というわけ。何故かというと、「君主制」と言うから「天皇制打倒」となる。今、「天皇制打倒」なんて言っても国民に受け入れられるわけがない。どこからも相手にされない。だから、今の新しい綱領で「君主制」という言葉をなくした。「君主制」ではないなら打倒しなくていいというのは、まさにそのためにやったことだ。ただし将来的には、国民の総意で決めると逃げてるわけだ。

いずれにしろ、情勢が熟したときに最終的には「天皇制」を打倒するんだということに変わりない。

 筆坂 それはそうだ。共産党としては、「天皇制」が反民主的存在であるということは変わりない。これがいつまでも残るのはよくないというのが、共産党の基本的な立場だから。

綱領に残された「革命」の牙

 田村 共産党は今も、「民主主義革命」だと言っている。「革命」とわざわざ綱領に入れているのは、天皇を最後はひっくり返すという心があるからだ。それがなければ、わざわざ「民主主義革命」なんて言わない。そこに爪というか牙が出ているわけだ。そこのところは気が付かないといけない。「現在、日本社会が必要としている変革は、社会主義革命ではなく、異常な対米従属と大企業・財界の横暴な支配の打破。日本の真の独立の確保と、政治・経済・社会の民主主義的な改革の実現を内容とする民主主義革命である」という話だ。

 筆坂 共産党の言う革命は権力。共産党の考え方では、要するにアメリカ帝国主義と日本独占資本が実際の権力を握っている。自民党も含めてだが。ここから権力を移行させるというのが革命だが、そんなことが選挙を通じて本当にできるのかと。だって、今年の総選挙で、共産党を含む連合政権側がたまたま多数を占めたとしても、2年後の選挙でまた自民党が多数を占めたらどうするんだよと。そんなことやってたら革命にならないでしょ。

 田村 だから、多数を取ったときに、多数の力で変えちゃうんだ。法律を変えたりして。民主党が政権をとった時にそういうことをやった。党の職員を役人に仕立て、役人の行動をスパイさせ、とんでもない法案を出させたことがあった。参院で、自民党が勝ったからそんな馬鹿なことができなかったが極めて似たようなことが起こるだろう。

 筆坂 面白いのは、この新しい綱領には、「社会主義革命」というのはない。「社会主義的変革」ということだ。不破哲三がどう説明しているかというと、「民主主義革命」を成し遂げた権力が「社会主義革命」もやる。だからこれは権力が移行しない。この権力が同時に社会主義も実現するという考えだから、「民主主義革命」をやった権力がそのまま社会主義に移行していくのでこれは「変革」であると説明している。だから、「民主主義革命」をやるのは大変なことだ。

一回権力取ればどうなるか

 田村 そういう意味では、共産党が加わった権力移行が起こった場合と、民主党が政権を失ったという話と実際は相当違ってくる。共産党が、一回権力を取ったらどうなるかということを考えておかないといけない。共産党に反対した連中はどうなるか、ということだ。それについて今は何も言ってないが、歴史を見れば分かる。毛沢東はどれだけ国民を殺したか。スターリンは何をしたか。ヒトラー批判があるけどヒトラーより自国民をたくさん殺している。自分に反対する者は殺す。だから、反対する筆坂さんもはずされたわけだ。それが共産主義の実態だ。

 中国に行って、習近平(国家主席)の批判ができるか。ロシアの赤の広場に行って、「おいプーチン、とんでもないぞ」と言えるか。日本には言論の自由がある。国会の内外で安倍批判を叫んでも、お構いなしだ。

(続く)