衆院2補選、真正面から政策論争をせよ
町村信孝前衆院議長の死去に伴う北海道5区と宮崎謙介前衆院議員の辞任を受けて行われる京都3区の衆院補欠選挙が告示された。国政選挙としては第3次安倍政権発足後初となる。
同日選への判断も左右
特に北海道5区の補選は与党候補と野党統一候補の一騎打ちとなる。参院選の前哨戦との位置付けにとどまらず、衆参同日選を行うかどうかの判断も左右するだけに真正面から政策論争をし勝敗を決してほしい。
今回の北海道補選の特徴の一つは、民進、共産、社民、生活4党が統一候補を擁立したことだ。なかでも共産が自党の公認候補を降ろして民進の候補の支援に回ったことが選挙戦にどう影響するかが注目されている。ただ、問題はその際に結んだ「共闘協定」の中身だ。
安保法制の廃止を目指すことや集団的自衛権行使容認の閣議決定撤回を国会活動の基本とすることなどが記されている。これは、沖縄県の翁長雄志知事が「辺野古移設反対」で共産党からタガをはめられその後修正がきかなくなってしまったのと同様、当選した場合の所属政党がどこになるかは別として、意味する外交・安全保障問題では共産党議員と同じ行動をすることをのだ。
これに関し菅義偉官房長官は、札幌市で「共産党の綱領は日米安全保障条約破棄、自衛隊解散だ。こうした政党が民進党と一緒になって候補者を擁立している」と批判した。日米同盟を廃棄して国民の安全を守れるのか。北朝鮮や中国の軍拡など日本を取り巻く国際情勢認識を示しつつ、安保法がなぜ必要なのか、廃止にしていいのか。両者は真っ向から論争すべきだ。
もう一つの特徴は、北海道で影響力を持つ新党大地が民進党から自民党へと支援体制を見直したことだ。鈴木貴子衆院議員は新党大地から民主党に鞍(くら)替えしたものの同党からの離党を表明した。その理由は同補選で共産党と協調する民主党の対応を受け入れられなかったからだ。
鈴木議員は共産党の「暴力革命」について政府に質問主意書を提出。これに政府が「疑いがある」とし「現在においても破壊活動防止法に基づく調査対象団体だ」と答えている。
このことは、暴力革命路線をとっていた共産党を国家機関が監視しているのであり、共産党幹部は否定したが、疑いの晴れない多くの根拠が残っているということだ。国民にとっても重大問題である。地元の札幌市で1952年に共産党員が起こした白鳥警部殺人事件についてどういう見解なのか、与党候補側は明快な回答を求めるべきだ。
両陣営が論争を深めるべきテーマは他にも多い。国会で審議に入れないのであれば、この選挙区を使って環太平洋連携協定(TPP)の在り方を論じ合えばいい。消費税増税の延期問題、アベノミクス、地方創生、1億総活躍社会なども候補者が先頭に立って議論すべきだ。
小手先の戦術やめよ
野党は与党の「民共合作」批判をかわすため、北海道で各党首が第一声を見送る異例の対応を取ったが、小手先のイメージ戦術でなく政策論争で対決色を出すことを望みたい。