【社説】辺野古移設 台湾有事に備える上で不可欠
沖縄県名護市の市長選挙で、岸田政権が支援する現職の渡具知武豊氏が、玉城デニー知事の支援を受け、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設計画中止を訴える元市議の新人、岸本洋平氏を抑え、再選を決めた。
名護市長選で現職勝利
沖縄での新型コロナウイルスの変異株「オミクロン株」の感染急拡大は、米軍基地内での感染拡大がその原因とされる。基地の危険性や米軍の衛生管理体制の不備が指摘されるなど厳しい選挙戦を強いられた中、移設推進派が推す現職市長が再選を果たした意義は大きい。
逆に、米軍基地の撤去や普天間飛行場の名護移設計画の中止を訴える玉城知事や「オール沖縄」と呼ばれるその支持勢力にとっては手痛い敗北となった。昨年10月の衆院選では、名護市を含む沖縄3区で立憲民主党の現職が自民党新人に敗北するなど、オール沖縄の退潮が顕著となっている。
普天間飛行場周辺は市街地が密集しており、2004年には米軍ヘリコプターが大学構内に墜落するなどその危険性が指摘されている。1996年、日米両政府は普天間飛行場の全面返還に合意し、2006年には飛行場の移転先として辺野古の沿岸部に新たな滑走路を建設することが決定された。
しかし、移設反対を掲げる知事が続き、移設計画は大幅に遅れている。また埋め立て予定地に軟弱地盤が見つかり、国は地盤改良のための設計変更を県に申請したが、昨年11月に玉城知事は不承認を決定し、国と県との長期の法廷闘争に発展することが懸念されている。
普天間問題の解決には、一刻も早く辺野古への移設を実現させる必要がある。今回の選挙結果を受け、玉城知事は「辺野古の基地建設に反対するという方向性は1ミリもブレることはない」と強弁したが、移設計画の中止や反対を唱えるだけでは、沖縄の将来に向けた展望は開けない。国と地元の対立を煽(あお)る手法は行政の停滞を深め、計画を遅延させるばかりだ。
いま中台間の緊張が高まっている。台湾有事は即日本有事であり、沖縄有事である。そうした事態に備え、日米が連携を強め円滑な共同対処を実施するには、沖縄米軍基地の維持とその安定的な運用は必要不可欠である。そのためにも、基地問題の解決が求められる。
今年沖縄では、名護市長選を皮切りに重要な選挙が目白押しだ。4月に沖縄市長選、夏には参院選、秋には辺野古での基地建設阻止を掲げ国と対立を続ける県の知事選が控えている。その結果次第では移設計画の進捗(しんちょく)に大きな影響が出かねない。宜野湾市長や那覇市長の選挙も秋に予定されている。
沖縄の振興と負担軽減を
移設計画を軌道に乗せるには、引き続き移設の必要性について県民の理解と支持が得られるよう努め、一連の選挙で移設容認派が勝利する必要がある。
今年は、沖縄の本土復帰50年の節目の年でもある。国は沖縄の戦略的な重要性を再認識し、経済の振興と基地負担の軽減に取り組み、沖縄問題の解決に全力を傾注すべきである。