半導体戦略 産官学で生産体制構築を


 経済産業省は国内半導体産業の競争力強化に向けて「半導体・デジタル産業戦略」を策定した。急速なデジタル化で半導体の需要が世界的に急増していることが背景にあり、成功させるには産官学が一体となって日本を再び「技術立国」に押し上げようとする熱意が必要だ。

 失われた30年取り戻す

 米欧中が半導体やデジタル産業で覇権の獲得を目指して兆円規模の産業政策を相次いで打ち出している。これに対し1980年代後半に世界シェアの半分を占めていた日本の半導体産業は、現在10%程度で焦慮に駆られている。家電製品で切り開いた日本の半導体はその後、パソコン、スマートフォン、さらに自動運転など人工知能(AI)の分野でも負け戦が続いている。

 戦略は①半導体産業やデータセンター整備といった重要分野を「国家事業」と位置付ける②日本が製造能力を持たない「先端ロジック半導体」に関し、海外の有力企業と連携して国内製造基盤を確保する――などが柱で、梶山弘志経産相は「失われた30年の反省と足元の地政学的変化を踏まえて大きく政策転換を図りたい」としている。

 半導体の国家プロジェクトとしては1976年の超LSI技術研究組合があった。研究費総額700億円のうち通産省(当時)が40%を負担。日本電気、日立、東芝など5半導体メーカー、その下の関係企業50社が参加した。4年間のプロジェクト期間でシリコン結晶技術など大きな進歩を遂げた。経済成長を目指す日本が取るべき産業政策と企業戦略が一致して実行に移され、この成果は80年代に入って「ニッポン半導体」の名を世界にとどろかせた。

 「産業のコメ」と呼ばれる半導体だが、今回開発と安定調達を目指すのは経済安全保障にも直結する「戦略物資」の様相を呈しているからでもある。この間、半導体産業の育成を進めた韓国や台湾、中国に後れを取っているのは遺憾だ。「国家事業として『大規模・長期・計画的』な財政出動を検討している」(同経産相)と意気込むゆえんだ。

 当時、半導体開発の国家プロジェクトに「学」の参加はほとんどなかったが、大学やその研究機関の研究の広がりは大きくなっている。むしろ当該企業の研究機関の規模は縮小傾向にあり、今回は産官学が協力して取り組むことが重要だ。大学から産業への技術移転を国が取り持つなど産官学共同の新しい形を追求する必要がある。「先端ロジック半導体」については、海外との連携も重要だが、半導体研究の新たなインセンティブを作り、国内でも技術を育てたい。

 わが国は半導体などいわゆる物性物理が強く、優秀な学者も多く、裾野の広がりがあり、地方の大学の研究にも見るべき知的財産は少なくない。これを集中させ、研究に拍車が掛かれば大きな成果が期待できるし、地方創生が可能かもしれない。

 「ものづくり」の力発揮を

 昨今、通信技術の方向性で予想がつかない期間が続き、わが国はその分野の技術革新で先進国の間でも後れを取ってきた。しかし、半導体は得意分野だ。かなりの投資が必要だが、「ものづくり」の力を発揮したい。