韓国 「スパイ防止法」廃止論で物議
北の党規約改正で左派主張
専門家「赤化統一路線変わらず」
 韓国でスパイ防止法に相当する国家保安法を廃止すべきとの主張がまた浮上し、物議を醸している。北朝鮮が今年1月の労働党大会で党規約を改正し、韓国に対する赤化統一(共産主義化)路線を放棄したため、もう必要ないというのが理由だ。だが、専門家は北朝鮮の路線転換を否定している。
(ソウル・上田勇実、写真も)
文政権の宿願、国会で審査も
左派系日刊紙ハンギョレ新聞は1日付の1面トップニュースで、改正された北の党規約を独自に入手して分析した結果、「北朝鮮は韓国革命統一論を捨てた」ことが判明、韓国社会で「国家保安法の存廃をめぐる論争が新しい局面」を迎えたと報じた。
同紙は党規約の序文に「党の当面の目的」として掲げられていた「全国的範囲における民族解放民主主義革命の課業遂行」という文句が削除され、代わりに「全国的範囲における社会の自主的で民主的な発展実現」という表現になったと指摘した。また「最終目的」として示されていた「全社会の主体思想化」が削除されたと明らかにした。
「民族解放民主主義革命」や「主体思想化」は、韓国を米国の植民地支配下にあると見なす北朝鮮が韓国解放に向け使ってきた用語だ。これらが消えたことが路線転換を意味すると判断した同紙は、北朝鮮が「北主導の革命統一論を事実上捨てた」と結論付けた。
その上で同日付社説は国家保安法について「赤化統一を最上位規範としている反国家団体である北朝鮮に対抗するため必要だという名分で維持されてきた」ため、「片方(北の赤化統一論)が廃止されれば、もう片方の存立根拠も揺らぐ」と述べ、不要論に持ち込んでいる。
韓国を代表する親北学者の一人で盧武鉉政権で統一相を務めた李鍾●(「夾」の二つの「人」を「百」に)氏も、党規約改正について「北朝鮮から統一論が消えた。韓国とは別々に繁栄しようというもの」と述べた。
だが、こうした解釈に保守陣営から反論の声が上がった。北朝鮮の対韓国工作の実態に詳しい柳東烈・元韓国警察庁公安問題研究所研究官は、改正された党規約には「最終目的」として「人民の理想が完全に実現された共産主義社会の建設」と明記されており、「赤化統一路線は変わっていない」とくぎを刺す。
柳氏によると、「社会の自主」や「民主的な発展」という言葉の真意も、韓国の米国に対する隷属状態からの解放を意味し、用語を変え相手を攪乱(かくらん)させる戦術にすぎないという。
ちなみに2010年に北朝鮮で開催された第3回党代表者会では、党規約から「共産主義化」という言葉が削除され、代わりに「人民大衆の自主性を完全に実現する」と表現され、韓国では路線転換のシグナルだとする見方も浮上した。
しかし、「北朝鮮の哲学辞典や主体思想叢書には『共産主義社会は人民大衆の自主性が完全に実現される社会』と明記されている」(柳氏)。つまりこれも攪乱戦術だったわけだ。
左派系のメディアや学者が言うように、北朝鮮が韓国に対し武装解除とも言える路線転換をしたとすれば、韓国だけでなく日本や米国にとっても大歓迎すべきことだ。
だが、実際は赤化統一路線を変更していない北朝鮮に対し、国家保安法を廃止しようという動きを先行させることで、逆に韓国が北朝鮮への警戒態勢を解除する方向に誘導しているとすれば、韓国左派の言動は極めて悪質と言える。
親北派が多い文政権にとって国家保安法廃止は宿願とも言われる。軍事政権時代が長かった韓国では同法を利用した自国民への過度な取り締りがあったのも事実で、廃止を促す人たちの中には過去の暗い記憶が残っている人も少なくない。
先月、一部の市民団体の呼び掛けで実施された同法廃止を求める国会への国民同意請願は10万人を達成し、国会での審査が開始されることになった。保守派は警戒を強めている。





の李石基・元議員(最前列左)=13年8月撮影-300x200.jpg)





