沖縄県の未就学児家庭、困窮世帯が過半数に
沖縄県は6月1日、県内の1歳児と5歳児の保護者を対象にした未就学児調査の分析結果を発表した。子供を取り巻く生活実態を把握することが目的だが、新型コロナウイルスの影響で困窮家庭の世帯収入減少が顕著になった。(沖縄支局・豊田 剛)
1歳児と5歳児の保護者対象、2回目調査の分析結果を公表
1歳児と5歳児の保護者を対象とした調査は2017年に続いて2回目で、沖縄大学が主体となって調査を実施した。沖縄県が新型コロナによる世帯への影響を本格的に調査したのは初めて。
調査は、「県の子供の貧困対策を効果的に実施する上で必要となる就学前の子供及びその保護者の生活実態や支援ニーズなどを把握すること」を目的とし、昨年9月4日から10月9日にかけて行われ、6645世帯(1歳児の保護者に8102冊調査票配布、有効回答数は3318件、5歳児の保護者に4472冊配布、有効回答数3327件)から返答があった。
所得区分は、厚生労働省の「19年国民生活基礎調査」における貧困線に当たる等価可処分所得(年間)が、127万円未満を「低所得層1」(困窮世帯)、127万~190万5千円未満を「低所得層2」(低所得世帯)、190万5千円以上を「一般層」の3種類に分類した。
回答者全体に占める困窮・低所得世帯の割合は51・4%で、前回の2017年度調査に比べて4・2ポイント増加。一般層(48・6%)を上回り、乳幼児を抱える世帯の過半数が経済的に厳しい状況にあることが分かった。
新型コロナウイルスの影響で世帯収入が減収した世帯は1歳児家庭で約36%、5歳児家庭は39%に上った。特に減収幅が大きかったのは、困窮・低所得世帯やひとり親世帯だ。
過去1年間に「食料を買えない経験があった5歳児の保護者は全体で19・3%だったのに対し、ひとり親世帯は39・7%と高い数値が出た。小学校入学に際し、「ランドセルなどの購入費が不足しそう」という回答は、困窮層では約半数となった。
これについて、沖縄大学の島村聡教授は「子ども食堂やフードバンク活動は効果的な支援を利用することはもちろんのこと、乳幼児とその保護者を重点的に支える視点が必要だ」と提言した。
重度抑うつなど健康被害も、自由記述では悲痛な叫びも
コロナ禍は、保護者の健康面にも影響を与えている。世帯収入が3割以上減った1歳児の保護者は10・2%、5歳児では8%で、重度抑うつ、または、不安障害相当だった。また、所得に関係なく、どの層でも過去1年間に子供を医療機関に受診させなかった理由では「新型コロナの感染を心配した」割合が1歳児で7割、5歳児では6割を超えた。専門家は、「コロナ禍は親子問わず健康面にも大きく影響している」と指摘した。
県の担当者は「コロナ禍は社会的に脆弱(ぜいじゃく)な世帯により大きな打撃となって、格差は広がっている」と分析した。
興味深いデータもある。2019年10月から始まった幼児教育・保育の無償化についての調査項目で、5歳児の保護者は所得が低い層の方が恩恵を受けていないことが分かった。
島村教授は「困窮世帯を各種支援制度につなげていくアウトリーチ(訪問支援)のような施策が必要。そこを徹底しなければ、深いところにいる困窮世帯を引っ張り上げることは難しい」と述べた。
自由記述では、「働きたいけど保育園に入れない。保育園に入れないから働けない」「毎日泣きながら暮らしています。助けてください」「働いても働いても生活が楽になりません」など、悲痛な叫びが多く見られた。
全国で最もシングルマザーの割合が多く、子供の貧困率が高い沖縄県。玉城デニー知事は1日、「切実な声を真摯(しんし)に受け止め、すべての子供が夢や希望を持って成長でき、誰一人取り残されることのない社会の実現を目指し、対策を推進する」と語った。正規雇用が少なく、産休制度がない職場が多い。企業側の努力も求められている。












