沖縄尚学高附属中、英検合格者数が全国1位に
着実に実績を上げる「人間力の育成」の教育理念
沖縄県屈指の進学校、沖縄尚学学園沖縄尚学高校(那覇市)の附属中学校は英検の合格者数で全国1位に輝いた。同校の教育理念である、グローバル化時代に通用する「人間力の育成」の取り組みが、英検を含めた英語教育で着実に実績を積み上げている。(沖縄支局・豊田 剛)
自己実現力を引き出す教育に成果
空手必修化で習得は天井知らずに
沖縄尚学学園は今年で、創立35周年の節目を迎えた。さまざまな記念行事が行われる中、「英検合格者が中学全国一」という朗報が同校に届けられた。
日本英語検定協会は、英語教育の向上に取り組んだ学校や企業・団体、個人を年に1度表彰している。今年は3月29日、東京で表彰式が行われ、昨年度の中学の部で沖縄尚学中が最高賞の文部科学大臣賞を受賞した。
同年度は、沖縄尚学中学の在学生570人(全校生徒数838人)が英検3級以上に合格した。内訳は、1級2人、準1級8人、2級108人、準2級216人、3級236人だ。
中高一貫教育を行っている沖縄尚学学園は平成21年度から英検の取得を必修化した。「沖尚では英検取得が当たり前の伝統が確立されてきている」と学園副理事長の名城政一郎中学校長は英語教育の方向性について強調する。通常の英語授業では読み書きに聴き取りとスピーキングを加えた4技能の習得を意識している。放課後は、生徒のレベルに合わせて、海外の提携大学から招請したネイティブイングリッシュによる英検補修を実施している。
平成29年度までは、「高校卒業までに2級取得」を目標としたが、30年度から「高校卒業まで準1級取得」に目標を上げた。
取得目標級は中1が4級以上、中2が3級以上、中3が準2級以上。高1が2級以上、高2および高3が準1位級以上と定めている。平均的な中学・高校よりも高いレベルで取り組んでいる。
目標を徹底化したおかげで、目標達成率は中1で96・0%、中2で93・0%、中3でも76・0%と高い。なお、高校では、昨年度、1級保持者が10人、準1級が77人に達した。
中学の英検合格者数で全国1位となったことについて名城氏は「決して1位を目指したわけではなく、学校全体で取り組み、生徒一人ひとりがベストを尽くした結果だ」と喜んだ。
英検の取り組みを強化する意義として、準1級取得者はセンター試験の英語を満点扱いする大学が増えていること、同取得者は海外の提携大学の受験免除で合格できるなどのメリットを挙げた。
名城氏は、「教育には内的動機付けだけでなく、外的動機付けも必要だ」と指摘する。「これまでの教育は大人が勝手に上限を決めていたが、実際にやってみないと分からない」「できそうもないことにチャレンジさせ、潜在能力を顕在化させるのが私の教育理念」。こう話す名城氏は、「やってみた結果、高校生には無理だと言われていた準1級の合格者が多く出た。これが自己実現力だ」と誇らしげに語る。
英検と同様、沖縄尚学学園は空手を必修化している。空手の習得も英語と同様、天井知らずだ。「空手連盟の役員は、高2までの5年間だけでは黒帯取得者は簡単に出ないと言っていたが、今では600人(全生徒の76%)も取得している」と名城氏は誇る。
また、沖縄尚学学園は、世界各国の大学入学資格として用いられている教育プログラム「国際バカロレア」(IB)もいち早く導入し、沖縄で初のIB認定校となった。IBは、国際バカロレア機構(ジュネーブ)が推進する教育プログラムで、所定のカリキュラムを履修し、試験に合格すると、国際的に通用する大学入学資格が得られるというもの。日本では科目の一部を日本語で受講できる「デュアル・ランゲージ・ディプロマ・プログラム(日本語DP)」が推進されており、宮城県の学校と並んで全国初の取得となった。昨年度は受講した17人全員がIB資格を取得した。
英検やIBなどの取り組みが評価され、ここ数年、日本全国の中高一貫校や地方議会、教育委員会をはじめ、米国やアジア諸国など海外からも「沖縄尚学視察」が相次ぐ。






