「生活科教育研究会」春の定例研究会が開かれる

文科省初等中等教育局・渋谷一典教科調査官

 「生活科教育研究会」の春の定例研究会がこのほど、渋谷区立千駄谷小学校で開かれた。文部科学省初等中等教育局教科調査官の渋谷一典氏が「学びをつむぐ生活・総合の授業の創造」と題して講演。全国各地から集った先生たちは、生活科・総合的学習において、学習指導要領が示す、育成したい児童たちの資質・能力について聞き入った。

自ら課題を見つけ探究を繰り返すことで児童の学習が充実

「生活科教育研究会」春の定例研究会が開かれる

文科省初等中等教育局・渋谷一典教科調査官

 「つむぐ」とは、綿、麻、繭、動物の毛から繊維を引き出し、縒(よ)り合わせて糸にする。「学びをつむぐ」とは、幼少期からの知識や体験・経験を経て、唯一無二の自分の物語を生み出そうとする学びであり、具体的に未来の姿(グランドデザイン)を思い描くことができるかどうかが、大切だ。

 教師の側からは、よく言われる「見取る」(子供が発する合図や意図を見て取る)から「見抜く」(見取るの次元を超え、子供の合図や意図を奥底まで見通す、表に表れない本質を知る)に向け子供への気付きが昇華されなければならないと分析する。

 「ヨットカー」「どんぐりコマ」の授業を例示しながら、1、2年生の生活科における学習指導の充実のために①試行錯誤や繰り返す活動を設定する②伝え合い交流する場を工夫する③振り返り表現する機会を設ける④子供の多様性を生かし、学びをより豊かにする――を挙げ、分かった喜び、見つけた輝きを児童と先生、クラス全員で共有することが学びを深めることにつながる。

 また、3、4、5、6年生の総合的な学習の時間における学習指導の充実のためにとして、主体性、地域愛、体験学習を通じた地域の魅力発見をテーマに①興味や疑問を重視し、適切に取り扱う②教師が意図した学習を効果的に生み出す――を挙げた。

 日常生活や社会に目を向け、児童たちが自ら課題を見つけ、「課題設定」「情報収集」「整理分析」「まとめ・表現」の探究を経由して、自らの考えや課題が新たにされ、探究の課程が繰り返される。このループを1回のループで終わらせること無く、1時間の授業から学期・学年、小学校時代と繰り返し、行うことで、児童たちの学習が充実していく。

 「考えるための技法」の意義として①「情報の整理・分析」の課程における思考力・判断力・表現力を育て、集まった情報処理の工夫を助けることにつながる②協働的な学習を充実させる、可視化され、児童間で共有して考えることにつながる③意識的な活動で、教科学習と総合学習を相互に往還する、学んだ資質・能力を実際の問題解決に活用する――を挙げ、教科横断的なカリキュラム・マネジメントが重要な役割を果たすという。

 学習評価も「知識および技能」「思考力・判断力・表現力」「主体的に取り組む態度」の3観点に絞り、評価や評定に示し切れない一人一人の良い点や可能性、進歩の状況については、個人内評価として実施する。学期末や学年末の評価が次の学期・学年につながり、教師の指導改善につながるものに、改善していく必要性を訴えた。