翁長沖縄県政に終止符を

西田 健次郎OKINAWA政治大学校名誉教授 西田 健次郎

崩壊した「オール沖縄」
訴訟連発はパフォーマンス

 去る4月28日の自民党沖縄県支部連合(國場幸之助会長)大会は、例にない熱気で盛り上がり、県政奪還に向けて次のアピールが全会一致で採決された。

 「今や、翁長県政は、行政の一貫性を放棄した無秩序状態に陥っており、翁長知事を支えるオール沖縄も存在そのものが音を立てて崩れている。

 支持団体等からの激しい抗議・批判に直面すると一転して、許可したものを不許可にするという法令無視に舵(かじ)を切る始末で、まさに支離滅裂な県政運営で理解不能な状態に陥っている。

 自民党の底力を発揮し、翁長県政に終止符を打たなければならない」

 ようやく翁長雄志知事の本質、論理破綻を見て本気になってきた。この4年間、本欄で徹底的に翁長県政の誤謬(ごびゅう)を批判してきたものとして、評価したい。

 2013年に、自民党県連や国会議員、首長、経済団体が米軍輸送機オスプレイ配備撤去運動や普天間基地(宜野湾市)の県外移設を言わされ、「建白書」とかを携えて東京に行ってまで反対運動をしたのには、筆者は耳目を疑った。

 そもそも自民党県連をはじめとする県政のリーダーたちをその流れに誘導したのは翁長氏だ。那覇市長を16年務めて、14人の市議(会派「新風会」、後に融解している)を引き連れた。その当時、保守系の大きい選挙では、選対本部長は翁長市長が就任することは当たり前で、自民・保守系の絶対的なリーダーであった。

 普天間基地の県外移設とオスプレイ配備撤去を求める翁長氏の条件は、保守の我々には理解し難い極めて厳しい内容である。同意しなければ選挙協力はできないとの恫喝(どうかつ)をのまざるを得なかったからである。しかし、県民は最近は冷静になり、辺野古移設反対の劇場型ワンイシューには「ノー」の民意を示してきた。

 昨年の衆院選では実質的に保革が引き分けた。宜野湾、浦添、うるま、石垣、沖縄の市長選は、いずれも自民系が圧勝している。今や、「オール沖縄」の実態は、「クオーター(4分の1)沖縄」あるいは「パート(部分)沖縄」でしかない。地元メディアを敵にしての戦いになる11月の天王山の知事選挙は、無党派と浮動票対策が必要になる。各市長選挙で見せた公明党、維新の会、中道派の真剣な取り組みと自民党の底力を徹底的に発揮すれば、絶対に勝てる。

 そこで、共産党と翁長知事が11月までに使う戦略・戦術と、それに伴う問題点を指摘しておきたい。

 まず、仲井真弘多前知事が普天間飛行場の名護市辺野古のキャンプ・シュワブ沖の公有水面埋立法に基づいて承認した行政行為について、翁長知事は第三者委員会なるものの答申によって、前知事の埋め立て承認を撤回した。これは、何らの権限も機能も有しない左翼学者、識者を恣意(しい)的に集めたものにすぎない。案の定、国と訴訟になり、最高裁で敗訴した。「最高裁の判決は尊重する」との誓約も無視(これは中国の模倣だ)するかのように、訴訟を連発。俺は国という権力と戦っているぞ、というパフォーマンスであり、11月までの時間稼ぎ、または、嫌がらせでしかないのだ。

 沖縄の「自己決定権」と騒いでいる御仁もいるが、1999年、地方分権改革を目指した大掛かりな地方自治法改正で、国と地方自治体の関係は主従から対等となった。しかし、「外交」と「防衛」は国の専権事項であることが明確になったことを勉強してほしい。

 それもそのはずだ。離島地域の島々や左翼系の首長に防衛と外交の権限を付与してしまえば、中国あたりの莫大(ばくだい)な資金がすぐに動き出し、わが国を維持できなくなるのは必定である。

 撤回の公益性を確保する狙いで「県民投票」をすると、沖縄2紙を連日にぎわしている。マスコミ御用達の論者には、直接民主制と間接民主制を少し勉強してほしい。

 公有水面埋立法と県民投票は全く関係ないし、影響力もない。国が法律で得た埋め立ての権利を、県知事の思惑で取り消す行為は、過去の事例では県知事に補償義務が生じる。辺野古はおよそ1000億円以上だが、その説明も議論もない。

 翁長知事を支える共産党主導の「オール沖縄」から金秀グループ、かりゆしグループが脱退し、“保守中道”で新しい組織が立ち上げられた。県民投票の実施とか反辺野古運動を惹起(じゃっき)しようとの報道があるが、そもそも彼らに保守を称する資格はない。

 保守とは、平和で安全で清潔で素晴らしい文化と伝統を誇るわが国日本を守り抜く固い決意を有する日本人である。日米安保体制を容認、評価し、世界一の悠久の歴史を有する皇国日本の天皇を崇敬し、自由も民主主義もないロシア、中国、北朝鮮などの政治思想と対峙(たいじ)する。

 中国にすり寄り、米軍基地がなければ観光はもっと伸びるなどと主張する経済人もいるが、安全保障情勢が悪化すれば観光も貿易も漁業も全て吹っ飛ぶ。米軍が撤退するのは、東アジアの平和環境が実現した時である。覇権国家中国が、南シナ海の次は東アジアの制空権、制海権を占有すると公言している今日、米軍基地と自衛隊の存在は否定できないのが防衛政策のイロハである。

(にしだ・けんじろう)