イスラエルとパレスチナ、停戦後も止まぬ報復の応酬
停戦にもかかわらずパレスチナ自治区ガザからロケット弾が発射され、イスラエル軍の報復攻撃も続いている。また、ガザ地区のパレスチナ人は、イスラエル側に向けて無数の発火装置や爆発物をぶら下げた凧やヘリウム気球を飛ばし続け、ガザ地区周辺地域のイスラエル住民は、昼夜を問わず襲ってくる脅威におびえている。(エルサレム・森田貴裕)
ガザから火炎凧やヘリウム気球
農地や森林に火災被害相次ぐ
5月29日朝、ガザ地区からイスラエル領内に向けて迫撃砲弾25発以上が発射された。大半はイスラエル軍の対空防衛システム・アイアンドームが迎撃したが、数発はイスラエル南部の幼稚園付近などに着弾した。始業時間前で現場に職員や園児はいなかった。
イスラエル軍は、報復として、ガザ地区のイスラム根本主義組織ハマスやパレスチナのイスラム聖戦の弾薬庫、テロ攻撃の指揮所などを含む拠点30カ所以上を空爆した。
29日の攻撃では、ガザ地区を実効支配するハマスとイスラム聖戦が、異例の共同声明を出し、「イスラエルによる侵略やガザ市民に対する犯罪への反撃だ」と主張。イスラエルが拠点を攻撃したことへの報復としてイスラエル南部地域への大規模攻撃を実行したと認めた。
イスラム聖戦は、数日前にガザ境界フェンス近くでイスラエル軍が爆発物を発見し、砲撃で戦闘員3人が死亡したことで、報復を行うと警告していた。
イスラム聖戦とハマスの両組織は反イスラエルを掲げており、イスラエル殲滅(せんめつ)をもくろむイランからの支援を受けているとされる。
イスラエル軍によると、この日の攻撃でガザ地区からイスラエルに向けて発射された迫撃砲弾やロケット弾は70発以上。イスラエル兵士3人が負傷した。イスラエルのネタニヤフ首相は「イスラエルを攻撃する者は、高い代償を強いられるだろう」と警告した。
ガザ地区からの迫撃砲やロケット弾攻撃は29日夜から30日未明まで続き、イスラエル軍は30日、ガザ地区にある両組織の軍事拠点65カ所に報復攻撃を実施。2014年夏のガザ侵攻以来の激しい攻撃の応酬となった。
イスラエル軍の激しい報復攻撃を受けたハマスは30日、エジプトの仲介で、イスラエル側が順守する限り停戦することで合意したと発表。イスラエルのカッツ情報活動相は「すべてはハマス次第だ」と強調した。
その後、ガザ領内の武装組織との攻撃の応酬は終了したかに見えたが、停戦にもかかわらず今月2日夜から3日未明にかけ、イスラエル領内に向けてロケット弾4発が発射された。うち3発をアイアン・ドームが迎撃、もう1発はガザ領内に落下した。
この攻撃を受け、イスラエル軍は3日、報復としてハマスの軍事関連施設8カ所を空爆した。
イスラエルに向けた散発的なロケット弾攻撃に加え、ハマスの呼び掛けにより反イスラエル抗議デモが続くガザ地区のイスラエルとの境界近くからは、火を付けた布や火炎瓶をぶら下げた火炎凧やヘリウム気球が飛ばされ、イスラエル側の農地や森林に火災の被害が相次いでいる。
イスラエル軍は、小型無人機(ドローン)を使って、イスラエル領空に侵入した火炎凧を撃墜している。
イスラエル軍によると、兵士、消防士、一般市民から成る合同チームが、過去10週間にイスラエル側に向けて飛ばされた火炎凧とヘリウム気球の500個以上に対処。24時間態勢を敷いているという。
火災の被害面積は約18平方㌔以上に及び、被害総額は500万シェケル(約1億5000万円)以上に達するとみられ、ネタニヤフ首相は、パレスチナ自治政府に損害賠償を求める方針。
ガザ地区から飛来するこの原始的な武器攻撃に対し、イスラエルの軍事・防衛関連企業であるラファエル社は最新式の小型無人機を開発したという。






