沖縄で教える日本の言葉と文化 仲田俊一理事長
ゴレスアカデミー日本文化経済学院 仲田俊一理事長に聞く
体験で知るルール、習慣、伝統
沖縄には外国人を対象にした日本語学校が10校ほどあり、年々生徒数は増加している。その中でも、那覇市にある学校法人ゴレスアカデミー日本文化経済学院は留学生に対するきめ細かなサービスや日本文化を体験的に学べることから人気を集めている。18年間、理事長として留学生と接してきた仲田俊一氏に聞いた。(沖縄支局・豊田 剛)
進路・生活を徹底サポート
――理事長として日本語学校を経営してみてどうか。
本校は1998年に設立され、その翌年、学校の経営再建をお願いされ、理事長を引き受けた。その当時、沖縄なのにどうして「日本文化経済学院」という名前なのか疑問に思った。台湾出身の経済人が「台湾から見る日本に憧れている。日本文化を台湾などアジアの人々は知りたがっている」と言った。「日本文化」は海外で一番魅力ある言葉でもある。
――学生の出身国の傾向はどうか。
定員340人で、ネパール、ベトナム、ロシア、カザフスタン、イギリス、スイスなどから来ている。設立当初は沖縄と歴史的交流がある中国福建省の学生が多かったが、後にベトナムの学生が増えた。日本との関係が良くなり、日本企業がベトナムに進出していることと関係がある。
ところが、2011年に発生した東日本大震災と原発事故で日本は危ないという噂がアジア各国で流れ、入学希望者が一気に減った。そこで、風評被害がなかったネパールの学生が増えた。今は定員を上回る応募がある。
――沖縄で日本語を学ぶことの意義についてどう思うか。
沖縄は日本の最南端(無人島を除く)に位置し、アジアの玄関口である。沖縄はアジア諸国とは気候も似ていてカルチャーショックは少ないから、日本の入り口には最適だ。だからまず、沖縄で日本の雰囲気を味わって欲しいと思う。沖縄の人は温かみがあり、気候も空気も良い。
あえて沖縄的なものは教えない。外国人にはまず日本のことを勉強してもらう。その中で、沖縄に関心を持った時点で沖縄についての勉強・研究を掘り下げていけばいい。学生が自分の国に帰って、沖縄を全部宣伝してくれる。
沖縄には東アジアの国際物流拠点がある。情報のハブにもなった。今後は人材交流のハブになればいいと思う。
――留学生に対する教育方針は。
まず日本はどんな国なのか、法治国家でありルールがあるということを教える。次に生活習慣、文化を知ってもらう。学生は入学すると、ごみの分別について知ってもらうため、必ず焼却炉に案内する。
また、プログラムの一環として、警察官が来校し、交通ルールを学んでもらう。そのほか、年間を通じて日本の伝統的な行事は取り入れている。
卒業後、自分の国に戻って、本校での経験が貴重な人生経験になっているし、自分の国の発展のためにもなると聞く。
――ゴレスアカデミーならではの特徴は何か。
学生の90%は職員がその国に行って直接、面接し書類審査する。
学生の進路指導も徹底して行う。教員は役所の諸手続き、通院の付き添い、アルバイトのあっせんなど生活面でも全面的にサポートする。これほど面倒見がいい学校は県内では他にはないのではないか。
――多くの学生はアルバイトをしていると聞く。
学生のほとんどはアルバイトをしている。学生がアルバイトに時間と意識を取られすぎて勉強がおろそかにならないよう注意している。
少子高齢社会にあって多くの企業は人材不足だということだ。建築、ホテルサービス、レンタカーの車整備、農業、IT分野で(求人が)多い。人材不足のため続けられなくなる企業、黒字倒産する企業もある。外国人を採用しなければ、日本・沖縄の経済を維持していくのが難しい。ただし、外国人を採用するにあたって日本語ができることは最低条件だ。
まず、学生が日本語に興味を持ち、日本を好きになって、海外交流の一役を担う。そのための人材投資、交流投資が大事だ。彼らは将来、東京や大阪などに出ていき、仕事を見つける大きなチャンスを得る。こうした真の友好と平和につながる人間的な交わりのできることが沖縄の資産だと思う。
=メモ= <なかた・しゅんいち>
1938年、鹿児島県出身。青山学院大学経済学部卒業後、72年に日本コールゲート・パルモリーブ株式会社沖縄営業所所長に就任。児童散水施肥装置を扱う有限会社サンセラ設立後、99年に日本文化経済学院理事長に就任。沖縄国際人材支援センター理事長、沖縄県人材育成事業協同組合理事長、全国日本語学校連合会常任理事。