コロナ対策で“公的居場所”失う沖縄の子供たち
官民挙げて食を守る動き、収束見えずさらに協力呼び掛け
新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、3月2日に沖縄県内の小中高校で臨時休校が始まってから2カ月が経過した。学童保育や児童館など公的な施設は今も閉鎖されている。困窮世帯の子供に食事を提供する“子ども食堂”、学習を支援する“無料塾”など「子供の居場所」が減っていることから、県は居場所施設を確保するために弁当支給や助成金、企業は飲食品を直接支給する形で、子供の居場所に支援、食を守る動きが始まっている。(沖縄支局・豊田 剛)
県は弁当支給や助成金、企業は飲食品を直接支給
3月初旬、県内のすべての学校が休校になる中、放課後児童クラブ(学童保育)など、共働き家庭の子供を預けられる、県内に約200カ所ある施設が次々と休止している。
共働き家庭にとっては、学童保育などの「子供の居場所」が頼りだったが、コロナウイルス感染拡大を受け、少しずつ公的な居場所は休止を余儀なくされている。子供の貧困率が全国ワーストクラスの沖縄では、「学校給食を取らないことで栄養不足に陥る子供が多い」(県庁幹部)ともいわれている。
保育園でも3月20日、浦添市が市内認可保育園の臨時休園を決めたことを皮切りに、休園または登園の自粛を求める動きが県内各自治体で広がっている。
祖父母や親戚など近くに子供を預けることができない保護者からは、「子供を一人で留守番させるのは不安」「昼ご飯をしっかり食べさせることができない」といった心配の声が県庁や施設に数多く寄せられている。
そんな中、沖縄県の玉城デニー知事は3月6日、県庁で会見し、県内で休止が相次ぐ「子供の居場所」に対して、弁当配達や食事の提供に関する費用を緊急支援すると発表した。官民連携で子供の貧困解消に取り組む「沖縄子どもの未来県民会議」としての取り組みで、県知事が会長を務めている。
玉城知事は「さまざまな事情から食事に困難を来す子供たちへの影響が懸念される」と話し、企業や団体に協力を呼び掛けた。臨時休校期間中、要請があった居場所1カ所当たり5万円を上限として支給した。
ところが、春休みに入っても子供の居場所の休止が解除されることはなく、県民会議は追加支援として、消毒・除菌剤、石鹸(せっけん)、マスクの購入の費用として、5万円を上限とする補助金を支給した。
新学期が始まる4月上旬になっても小中学校などは引き続き臨時休校の措置が取られた。県民会議は春休み前までと同様に、食事の費用として最大5万円を提供するなど、対応に追われている。
子供の居場所が休止となっている中で、子供を近親者や施設に預けて働くことに抵抗を感じる保護者は多い。こうした中、那覇市は4月21日、医療従事者や特別な事情のある保護者の子供に限定した「特別保育」を実施することに決めた。
ある保育園の責任者は、「医療従事者の子供に保育を提供することは必要」と受け止める一方で「市は不公平がないように対応してほしい」と求めた。職員の一人は、各家庭の事情が分かることが多いだけに、「ある程度の例外を認めることになるかもしれない」と公平性をいかに保つか、頭を抱えている。
子供たちが日中、“家での留守番”を余儀なくされる中、企業や団体からの支援が届き始めている。
ITエンジニアを育成するNexSeed沖縄校は今月中旬から地元新聞社と合同で飲食物を届けるプロジェクトを始めた。食品や物流会社スーパー、大手コンビニなどから協賛を募り、集まった飲食品を県内の子供の居場所に無償配布している。
コロナ感染の収束が見えず、学校や居場所の休み期間が長引く見通しであることから、多くの企業や団体に協力を呼び掛けている。






