辺野古移設反対派の本音 全米軍基地の撤去が狙い

《 沖 縄 時 評 》

中国やISの侵略が可能に

 米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設に反対する市民が、米軍キャンプ・シュワブのゲート前で座り込んでから7月6日で丸3年を迎えたという。

◆72年間戦争起こらず

辺野古移設反対派の本音 全米軍基地の撤去が狙い

米軍キャンプ・シュワブのゲート前で「全基地撤去」などと書かれたプラカードを掲げる辺野古移設反対派=沖縄県名護市辺野古

 ゲート前には市民約130人が集会を開いた。彼らは、「“新基地”建設阻止の思いは強まっている」「必ず私たちの手で止めよう」と結束を確認。政府が海上工事を強行する中、国内外に広がる基地建設の不当性や人権問題を指摘する声に、確かな希望をつないだという彼らの思いを沖縄タイムスは報じている。

 辺野古移設反対派は辺野古の代替施設建設だけに反対しているのではない。彼らの掲げるプラカードには「辺野古新基地反対」だけでなく「NO基地」「NO BASES」「CLOSE BASES」「全基地撤去」もある。

 移設反対派は、沖縄の米軍基地を全て撤去するのを目指している。全米軍基地撤去の一環として辺野古基地建設反対をしているのである。彼らが米軍基地に反対する理由は「軍隊が存在するから戦争は起こる。軍隊がなくなれば戦争はなくなる」という考えからである。沖縄に米軍基地や自衛隊基地があるから戦争になる恐れがあると彼らは主張している。米軍基地や自衛隊基地がなくなれば沖縄は戦争の危機がなくなり平和になると彼らは言う。彼らの考えが正しければ、私も沖縄の米軍基地や自衛隊基地撤去に賛成し、辺野古基地建設に反対する。

 しかし、軍隊があるから戦争になるという考えは正しくない。戦後72年間、沖縄には米軍基地があり続けたが、基地被害は確かにあったものの、戦争が起こったことは一度もない。72年間、沖縄では戦争がなかったのに、米軍基地があると戦争になるというのは勝手な妄想であると言う以外にはない。

◆軍事力弱い所に侵略

 過激派組織「イスラム国」(IS)系の武装勢力はこのほど、フィリピン南部ミンダナオ島のマラウィに侵略し、マラウィの一部を占拠して住民数百人を人質に取った。フィリピン軍はマラウィ奪還作戦でISが占拠している市街地に空爆や砲撃を行った。フィリピン軍とISの戦闘は6週間にわたって続いている。

 戦闘でIS戦闘員337人、治安部隊85人、住民44人を含む400人以上が死亡した。そして26万人の住民が避難民となった。

 戦闘に参加しているのはフィリピンのISだけではない。イラク、シリアなどの国々からフィリピンに侵入してきたISも多い。シリア、イラクで敗北したISが東南アジアを本拠地にしようとしているのではないかと予測する専門家も居る。

 沖縄ではこのような戦争が一度も起こったことはない。なぜ、ISが侵略したのは沖縄ではなくフィリピン・ミンダナオのマラウィだったのか。理由ははっきりしている。マラウィはフィリピン軍が弱い地域だからである。軍事力が弱いからISが侵略したのである。もし、ミンダナオのマラウィに沖縄と同規模の米軍基地があったらISが侵略することはなかっただろう。

 沖縄とマラウィの違いは軍事力の差である。もし、ISが沖縄を侵略しようとしたら、侵略する前に自衛隊と米軍によって壊滅されてしまうだろう。自衛隊と米軍が駐留している沖縄にISが侵略するのは不可能である。沖縄は軍事力が強かったから侵略されなかった。マラウィは軍事力が弱かったから侵略されたのである。軍事力が弱ければ侵略されるというのが現実であるし、世界の常識である。軍隊がなければ平和になれるというのは嘘(うそ)である。

 2011年に全ての米軍はイラクから撤退した。米軍が撤退したイラクはシーア派とスンニ派の宗教戦争に明け暮れ、軍隊の幹部は腐敗し、軍事力は衰退していった。米軍の優れた武器を所持していたイラク軍であったが、100人のISの兵士が攻撃してきた時、1000人のイラク兵が武器を放棄して敗走した。イラクがISに侵略されたのはイラク軍がとても弱かったからである。

 もし、沖縄に自衛隊も米軍も駐留しないで反対派が言うように平和でのどかな沖縄であったなら、ISが沖縄に侵略して那覇市民を人質にすることが可能である。ISは軍事力が強い国には侵略しない。弱い国に侵略する。ISだけでなく侵略者は軍事力の弱い国に侵略する。強い国に侵略することはない。強い国に侵略すれば返り討ちに遭い、壊滅させられるからだ。

 反対派は基地建設を阻止し、沖縄から米軍基地を撤去して「子や孫にしっかり平和を残す」と言っているが、戦後の沖縄は平和であった。今のままの沖縄は平和であり続けるが、彼らの要求している通りに自衛隊も米軍も沖縄からいなくなれば、中国やISに侵略されてしまうような沖縄になる。彼らは子や孫に植民地にされる沖縄を残そうとして頑張っているのだ。彼らは沖縄を不幸にする連中である。

 また、反対派は「基地ができたら未来永劫(えいごう)」と言っているが、これも議会制民主主義国家の基本を無視している彼らの妄想である。フィリピンは米軍基地を撤去させたし、イラクも米軍を完全撤退させたことがある。

 フィリピンは議会で米軍基地の撤去を議決した。議会で撤去を議決すれば米軍基地は撤去しなければならない。米政府はフィリピンから米軍基地を撤去した。イラクの場合は米軍を撤退させたかったから、米兵の犯罪は全てイラクの法律で裁くことにした。米兵はイラクに駐留しても米国民である。米軍は米兵の米国民としての権利を守る義務がある。米兵の犯罪を米国以外の国に裁かせることはしない。だからイラクから撤退した。

◆国会議決あれば撤退

 沖縄だけでなく日本の米軍基地を撤去させる方法は簡単である。フィリピンやイラクのような議決を国会でやればいいのだ。そうすれば米軍は日本・沖縄から撤退する。共産党と社民党が国会の過半数の議席を獲得して、国会でフィリピンやイラクと同じ議決をすればいい。そうすれば米軍は確実に日本から撤退する。それが議会制民主主義の決まりである。日本も米国も議会制民主主義国家だ。国会で決まったことは両国とも実行する。

 ところが、共産党や社民党など米軍基地撤去を主張する政党が「未来永劫」に国会の過半数の議席を確保することはできないから彼らは「未来永劫」というのである。彼ら自身が選挙に勝って国会の過半数を握ることを諦めているのである。だから、辺野古の現場で工事を阻止する運動を懸命にやっている。

 しかし、彼らの口から出るのは、「政府や警察の圧力は強まっているが、ここに人が集まることに希望を見いだしたい」「政権も強硬だが、勝つまで続ける。子や孫にしっかり平和を残す」――である。現場で彼らが勝つのは不可能である。勝つことはできないと知りながらが勝つまで闘うと彼らは言うのである。いじけている辺野古基地建設反対派である。

 うるま市の女性(66)は「当初は県内だけの閉塞(へいそく)感があったが、今では県内だけでなく毎日のように県外や国外の人が座り込む。国連が人権問題として取り上げたことも、じわじわ効いてくるのではないか。政府や警察の圧力は強まっているが、ここに人が集まることに希望を見いだしたい」と述べているが、辺野古“新基地”建設反対は最初から共産党や社民党に革マル、中核が参加している全国的な運動であった。県内だけの運動ではなかった。「県内だけの閉塞感があった」というのは嘘である。

 大事なことは地元住民や県民、国民が支持しているか否かであり、国連が取り上げても大した効果はない。現実は、地元や県民が反対派の身勝手な行動に反発するようになり、2、3年前に比べて参加者がかなり減っている。一方、辺野古代替施設の建設は淡々と確実に進んでいる。

(小説家・又吉 康隆)