談合疑惑で揺らぐ玉城県政 首里城火災の責任曖昧に

《 沖 縄 時 評 》

◆豚コレラへの対応でも混乱 契約前に業者と会食

 自らが招いた官製談合と、首里城火災に続く、豚コレラ(豚熱、CSF)発生など、相次ぐ災害に沖縄県の玉城県政が揺らいでいる。

 県議会で追及の続く官製談合疑惑では、玉城デニー知事の倫理観の欠如もさることながら、知事としての資質と適格性が疑われる。県民の不信は高まるばかりだ。また、緊急災害時に十分な対応ができない県政に対する県民の不安は大きい。

 新聞2紙を中心とした地元マスコミは、「辺野古反対」勢力と結託した談合疑惑で知事の姿勢を問う論調は貧弱で、首里城火災では、玉城県政の責任を国に転嫁する手法をもって世論を操作している。

談合疑惑で揺らぐ玉城県政 首里城火災の責任曖昧に

玉城知事は記者会見で万国津梁会議について言及を避けた=昨年12月13日、沖縄県議会

 昨年5月24日、沖縄県は「万国津梁(しんりょう)会議設置等支援業務スタートチーム」と称する民間業者と委託業務契約を結んだ。1年間の委託(受託)契約金は2400万円超である。前代未聞というべきか、玉城知事は県と業者の契約が結ばれる前夜(23日夜)、複数の県職員を引き連れてこの契約を受託した業者代表らと那覇市内の飲食店で会食したのである。

 契約金はもちろん、県の予算であり、県民の税金を充当した公金に当たる。事業入札に絡んだ便宜供与、利益誘導が疑われ、官製談合疑惑が批判されるのは当然だ。しかも、「万国津梁会議」受託業者の主要メンバーは2018年9月の県知事選で玉城デニー氏を当選させた立役者だ。

 知事選では、玉城氏が公約のうち主要政策のトップに位置付けたのが「万国津梁会議」である。新時代の沖縄を構築する施策の推進を掲げ、基地問題、経済財政など5分野に有識者、専門家の委員会を設定する。ND(新外交イニシアチブ)に関する複数のメンバーが基地問題の委員会に席を置いているのは周知の事実だ。

 知事の諮問機関の位置付けだが、県庁関係者によれば、「県の各部署が所管する業務について、各部署の頭越しに重要政策が津梁会議で決定され、無用な混乱を招く恐れがある」と危惧する声があるのも事実だ。県庁職員の士気の低下が心配される。

 実際、このところの沖縄県庁のたるみ、怠慢ぶりは目に余る。

 例えば、昨年4月に玉城知事は18年度の観光客を999万9000人と発表した。ところが、知事発表と異なり、18年度の観光客は既にに1000万人を超えていたため、後に修正する。県職員のカウントミスが明らかになった。観光振興が県政の目玉政策であることからすると、とても容認できない失態と言えよう。

◆国に火災の責任転嫁

 さて、万国津梁会議に話を戻すと、県議会では当初から「屋上屋の造り過ぎではないか」と、五つの分野を網羅した委員会設置の実効性に批判が出ていた。つまり、県議会や県庁内部でも発足に疑問符が付いた万国津梁会議が早速、官製談合疑惑に見舞われているのが現状というわけだ。県議会野党の自民党は、県の基本姿勢をはじめ、業務契約の不透明な経緯や委託料前払い問題などを一貫して追及しており、今後の展開次第では玉城県政の屋台骨が大きく揺らぐ可能性がある。

 公金の不透明な支出という重大問題にもかかわらず、同問題に対して地元マスコミは取材の掘り下げはなく、県議会のやりとりを通り一遍に報じただけである。

 沖縄県の無責任態勢は、首里城火災でも見られた。

 昨年10月31日に発生した首里城火災では、正殿や北殿、南殿など主要建造物が焼失した。昨年2月に首里城の管理権を国から移譲されたばかりの沖縄県はまず、火災発生そのものについて、管理責任者の不備を県民、国民に率直に謝罪すべきである、との批判である。知事が県民や首里城周辺住民に謝罪したのは火災発生からだいぶ経ってからだった。

 さらに責任論でも批判が噴出した。

 火災の責任所在が一義的には管理者の沖縄県にあり、首里城の運営を委託された美(ちゅ)ら島(しま)財団にも同等の責任が存するのは当然に思えるが、県や財団は今日に至るまで責任の所在を公表していない。つまり、責任を曖昧にしたまままのだ。

 火災発生当初こそ、県や財団の責任を追及していたマスコミも時間が経つにつれ、逆に国に責任を転嫁する論調に豹変(ひょうへん)した。予算面の手当てなど首里城再建に全力を傾ける政府方針に対し、名護市辺野古崎の埋め立て問題を引き合いに出して「県民に寄り添うのではなくて県民世論を軟化させる狙いが透ける」などと報じるありさまで、再建に取り組む政府や安倍政権を意図的に批判する論調を繰り返した。

◆対立感情煽る地元紙

 玉城県政に同調する地元マスコミ、それに識者とか文化人と称する沖縄の関係者は、スピード感あふれる政府の支援策に対してすら「対立感情」しか持ち合わせていないようだ。

 首里城火災後、新聞紙上には再建を望む識者の意見が連日掲載された。その内容のほとんどは、首里城の火災と再建にかこつけて、最終的には「辺野古反対」の論調に集約するよう組み立てられている。強いて国との対立構造を煽(あお)り立て、首里城再建支援策を積極的に打ち出す安倍政権と戦う世論づくりが根底にあるのではないか。

 こうした意見の数々は、地元マスコミの報道姿勢を反映した結果だともいえ、また、玉城県政をバックアップする意図が働いているのも事実だろう。

 因縁めくが、首里城火災は玉城知事が海外出張中の昨年10月に発生した。年が明けた新年早々には、玉城知事の出身地であるうるま市で豚コレラが発生した。

 豚コレラの収束は予断を許さないが、県庁関係者によれば、ワクチン接種の是非と時期をめぐっては知事と副知事の間で意見の衝突があったとされ、養豚農家の不安はかなりのものがあった。また、陸上自衛隊などが出動した防疫活動の現場では、沖縄県庁の指揮系統に乱れが生じたため、現場では一部混乱があったことが報告されており、緊急時の災害に対応できない県の無責任態勢は改めて批判されそうだ。

(ジャーナリスト・新里 英紀)