欧州経済と武器輸出

濱口和久

 航空自衛隊OBで、現在は軍事ジャーナリストとして活躍中の鍛冶俊樹氏が監修をつとめている『現代のミサイル(ミサイルの基礎知識から世界の核ミサイル危機まで)』(綜合図書)が発売された。

 私が一番興味を持ったのは、世界のミサイル輸出の実態についてのコラムだ。

 ストックホルム国際平和研究所の調べによると、2012年度の武器輸出国トップ3は、アメリカ、ロシア、中国。ついで、4位から10位までヨーロッパ諸国(ウクライナ・ドイツ・フランス・イギリス・イタリア・オランダ・スペイン)が続いている。これら上位10カ国だけで、武器輸出総額の9割を占めており、ごく一部の国が世界の武器市場を牛耳っていることになる。

 武器輸出の中で、ミサイル輸出額に限定して見てみると、順番が変わってくる。アメリカの1位、ロシアの2位は変わらないが、フランスが3位に浮上し、中国が4位、イギリスが5位、ドイツが6位と続く。

 コラムの中では、特にフランスとドイツのミサイル輸出に注目しているが、ここでは詳細は割愛し、一部を紹介したい。

 フランスのミサイル輸出額は、武器輸出総額の約27%にあたる3億700万ドル。フランスが誇る対艦ミサイル「エグゾセ」は、2012年度だけで、ブラジル、チリ、ギリシャ、インド、マレーシア、モロッコ、オマーン、カタール、アラブ首長国連邦、ウクライナなど10カ国以上に輸出されている。

 一方のドイツは、武器輸出総額の約11%にあたる1億3400万ドルがミサイル輸出額だ。

 一般的に軍事大国といえば、アメリカ、ロシア、中国というイメージが強いが、ヨーロッパ諸国の経済も、軍事産業によって支えられているのである。

 日本はいまだに「武器輸出三原則」に縛られているが、武器輸出が解禁になれば、日本経済にとって、間違いなくプラスに働くと、私は思うのだが。