特定秘密保護法案 与野党の激しい議論を期待


 永田町は日本政治の中心地だ。政府与党をはじめとして与野党の情報が乱れ飛んでいる。終日ここに坐っていても退屈することはない。

 しかし永田町は怖いところだ。情報を弄んでいると、逆に弄ばれることがある。その被害は個人にとどまらない。政府や野党の中枢情報がそっくり盗まれることがある。党の情報が洩れるぐらいなら我慢もできるが、国家の機密がやたらに盗まれるようでは困る。

 相手が日本の手の内を先刻承知し、その上の外交交渉なら日本は裸同然で、手も足も出ないまま負けるに決まっている。国益を損じること甚大だ。

 外交はアメリカの跡をヨチヨチ追いかけていけばそれで間違いないという、今までの日本の考え方の方こそ大間違いだ。そこで従来の機密保護法を一段と厳しくして再検討することになった。

 法案は、特に秘匿が必要な安全保障に関する情報を「特定秘密」に指定し、漏洩した国家公務員らに最高で懲役10年を科す。遅きに失したきらいはあるが、やらないよりはましだ。

 しかし政府の考え方がだんだん分かるにつれて、例により国論の二分が顕著になった。反対論の根拠は国民の口封じ、つまり言論の自由の圧殺だ。言論の圧殺が問題になる度にこの議論を随分聞かされた。昔もあんまり説得力がないと感じたが今度もまたそうだ。

 そもそも個人の言論弾圧と社会の言論制限は次元が違う。国民の口を封じてはならぬ。当たり前のことだ。しかし国家の機密は守る必要がある。これもまた常識だ。社会全体のために個人は引き下がらなければならぬ、ということを多くの国民は信じて疑わない。国民の素朴な昔ながらの考え方だ。

 世界各国では厳しい機密保護法を持っている国が多い。国家の機密を勝手に利用されて、国が危うくなる事態こそ絶対に避けるべきテーマだ。

 臨時国会では、この法案に対して与野党の激しい賛否両論が展開されるだろう。同じ議論の繰り返しになるに違いないが、それだからやめろというつもりはない。いやそれどころか、与野党精根尽き果たして、互いにダウンするくらい議論を重ねるがいい。もう質疑の必要なしというところまで論じ尽くしてもらいたいものだ。

 反対論も大歓迎だが、奥歯にモノがはさまったような議論は御免蒙りたい。反対なら反対とはっきり主張するのがスジだ。国防は賛否それぞれ明確に結論を出して、後腐れしないことが大切だ。

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