長期政権と政治力、在職1000日を超えた安倍首相


 政権は長ければいいというものではない。しかし政権の寿命はひとつの目安にはなる。政権の長寿は政権の政治力と正比例する。長寿であれば、政権がそれだけ安定かつ強力であるとの何よりの証拠になる。

 そこで安倍政権を眺めると、まだ政権を担当中だから何ともいえない部分はあるが、安倍首相は先週20日、第1次政権との通算で在職日数1000日を迎えた。1000日は多いか、少ないかといえば、もちろん多いほうに属する。まだ現役ちゃきちゃきだから、この先何年続くかは分からない。戦後の首相で1000日を越えたのは7人いるが、安倍首相はその7人目になる。現在記録を更新中の身だ。この先何年続くか神様のみが知るだけということになる。

 政権は1年未満では短いという印象が残る。しかし5年を越すと長命すぎるとのそしりを免れない。首相のイスに坐るのは政治家の本望だろうが、坐っている時間的長さがむずかしい。あたら名宰相といわれた人材が辞める時機を誤ったため天下の悪人のようにいわれた例は挙げるに暇がないほどだ。

 戦後の首相で最も長い在任期間を記録したのは佐藤栄作だ。何しろ通算2798日間といわれるから安倍氏のほぼ3倍近くイスにしがみついていたことになる。

 永田町では首相が最高のポストだ。在職中はもちろんだが、辞めてからもこの前歴がモノをいう。「元首相」の肩書はどこへ行っても木戸御免だ。いろんな会合ではいつも最上席に坐らされる。男と生まれ、男冥利に尽きよう。だから政治家になった以上、首相にならなければウソだ。政治家は誰もがそう思っている。政権に関係のない野党でさえそう信じて疑わないところがある。笑止千万だがホントだから仕方がない。

 それでも自民党は政権の経験があるから、政権の座に坐っても別に驚かない。鷹揚なところがある。しかし野党は政権慣れしていないから、その威張ること見るに堪えない。昔、野党が政権を取ったことがある。片山哲社会党内閣がそれだ。その時痛感したのが、社会党の威張り方だ。各省の高官たちがヒイヒイ悲鳴を上げていたほどだ。

 しかし政治は政治として政治家の領分に入るが、行政は別だ。官僚に任せる外はない。何でも口出しする政治家が行政については官僚任せを余儀なくされるのはそのためだ。

 新しいようで古い体質が残っているのが永田町だ。

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