自民党の正念場 長期政権を目指す安倍首相


 今週は自民党の正念場だ。内閣改造と党役員人事が一緒に来るので大幅人事異動にならざるを得ない。安倍首相もこんどはお義理ではなく、自分自身の内閣を作ろうと意気込んでいる。

 首相の最大の狙いは長期政権を築くことだ。新布陣で安全保障に関する法整備や地方創生、女性の力の活用を目指す。党の主張や伝統を尊重ばかりはしていられない。自分の抱負や主張を高々と振りかざすだろう。

 党内はショックを免れない。改めて反安倍の動きが再燃してくる恐れもある。どっちにしても騒動のタネになるのは間違いない。しかしそれは覚悟の上だ。そうならないよう根回しに努めるより外はない。

 どっしりと腰を据えるハラを決めた総理総裁にはドッと敵が増える。その敵の包囲の真ん中で討ち死には真っ平御免だ。安倍首相もそのつもりで対応していかなくてはならない。

 自民党の立場は決して弱くない。衆参両院で多数を握り行くところ敵なしだ。その上、野党の足並みが乱れている。全野党の一致団結の攻撃なら怖いが、バラバラの野党のちょっかいなら恐れるに足りない。絶対多数の与党としてだれ憚ることなく、思いのままだ。

 しかし心配がないわけではない。政府は集団的自衛権行使などの関連法案を来春の通常国会に一括提案する方針だ。野党の追及を受ける国会審議を乗り切る切り札として準備したのが、防衛相などを歴任した石破幹事長の安保法制相起用だったが、石破氏は拒否した。

 総裁、幹事長らは、女性の重要性を強調してやまない。それは結構に違いないが、女性議員は数が少なく、入閣適齢期前でも起用される傾向があり、男性議員の不満の要因になる。

 先物を買うのは政治家のクセだが、アテもないのに女性を振り回すと、あとで苦労する。女性は男性に劣るとは思わないが、たとえば海千山千の自民党代議士を女性幹事長が取り仕切れるかといえば、大方は首をかしげるばかりだ。女性陣に望まれるのはまず実績を示すことだ。しかしいまだかつて女性幹事長が誕生したことはない。

 11月には沖縄知事選、12月には消費税率引き上げ判断など、安倍政権には難しい課題が待ち受けている。いまのところ自民党の安倍総裁は一生懸命やっているが党内一糸乱れない状態とは言い切れない。毎日危ない橋を渡っているようなものだ。幸か不幸か、その自民党の弱みを突くような野党が存在しないのがせめてもの救いだ。(I)