秋にらみ静かなり 焦点は内閣改造・党人事
このところ政治は一服気味だ。しばらくは何事もなく無事平穏のまま推移していくに違いない。しかし表面が波静かだから政治の中身も穏やかと思うのは大きな間違いだ。永田町では世間の常識は通用しない。
与野党を通じて、動きにならない動きが静かに展開されている。そのひとつの動きが政界再編成だ。単に政党の離合集散といわずに政界再編成などと大袈裟な表現を使っているところに永田町の屈折した心理が読み取れる。
野党各党は何かことを起こしてひと騒動起こしたいのだ。その典型例が結いの党と橋下新党との合流話だが、どうもすんなりとはいかない。政党名が決まらないだけでなく、集団的自衛権をどう捉えるかなど肝心の政策でまとまらないのだ。
このままでは安倍政権の長期化が保証されるばかりだ。民主政治は与野党の睨み合いがあればこそ進歩する。この緩んだ空気を引き締めるためには解散しかない。しかし安倍首相にその気がなく、与野党もそれで安心している。こんな次第だから、永田町は無事平穏そのものだ。
それでも夏が過ぎ秋が来ると臨時国会が開かれる。秋は政治のシーズンだ。9月には安倍首相は内閣改造と党内人事異動を予定している。首相は7月下旬から8月上旬までの10日間、中南米を外遊し、その後の連休中に人事構想をしっかり練る考えだ。そのため8月の声を聞くと、改造と党内役員人事がどうなるか、永田町の関心が急速に膨れ上がってくる。
女房役の菅官房長官を代えるのか、来年の総裁選で最大の対抗馬になるとみられる石破幹事長をどう処遇するか。それだけではない。何しろ、当選5回以上の衆院議員と当選3回以上の参院議員計50人程度が「次は自分が大臣になる番だ」と目を輝かせて待機しているのだ。この思いをどう吸い上げるのか。期待に応えなければ首相の求心力に影響が出かねない。首相の腕の見せ所だ。
首相は19日、地元山口県の下関市の東行庵を訪れ、幕末の志士高杉晋作の墓の前で手を合わせたが、「まさに志が定まった」という発言は不気味でさえある。
首相官邸に独走とかやり過ぎとか、批判の声がかかる。首相も気にはしているが、倒閣運動ではないので、見て見ぬフリだ。
これに比べて野党はどうか。再編に向けてもたもたしている各党には、ノンビリムードを改め、もっと緊張感を持って対処してもらいたいものだ。(I)