枢機卿にも小児性愛者がいた
ローマ法王フランシスコはイタリア日刊紙ラ・レプップリカ(7月13日付)とのインタビューで、「聖職者の約2%は小児性愛者(ペドフィリア)だ。司教や枢機卿の中にも小児性愛者がいる」と発言し、教会内外で衝撃が広がったが、バチカンのロンバルディ報道官は後日、「法王はそのようには語っていない」と否定した。
同報道官は14日、「法王とラ・レプップリカ紙とのインタビュー(7月10日、フランシスコ法王の宿泊先のゲストハウス、サンタ・マルタで実施)は会見というより、エウジェリオ・スカルファリ記者が法王との対談を再編集した記事だ。法王の発言がその通り再現されていない部分がある」と指摘する。具体的には、「聖職者の2%が小児性愛者」という部分と「小児性愛者の中に枢機卿もいる」という2カ所だ。同報道官によると、「スカルファリ記者は無神論者で教会批判者として名が通っているジャーナリスト」という。すなわち、フランシスコ法王の発言内容が意図的に歪曲されているという指摘だ。それではなぜ、ローマ法王は教会批判者との会見に応じたのだろうか。
残念なことだが、ローマ・カトリック教会には過去、枢機卿が自分の教え子に性的虐待を犯した事実はある。最近では、英カトリック教会最高位、スコットランドのセント・アンドリュース・エジンバラ大司教ポストを辞任したキース・オブライエン枢機卿(74)は2013年3月3日、昔、若い聖職者に対して「逸脱した性的行為をしたことがある」と告白している。スコットランド教会の広報HPで述べたもので、枢機卿は犠牲者、教会関係者、国民に対し謝罪を表明している。
「犠牲者が若い聖職者だから、小児性愛者に該当しない」と指摘されるかもしれない。それではオーストリアのローマ・カトリック教会の最高指導者(当時)、グロア枢機卿が未成年者の教え子に性的虐待を犯していたことが、犠牲者の教え子の証言から発覚したことがあるのだ。
1995年、オーストリアのカトリック教会最高指導者だったグロア枢機卿は教え子に性的犯罪を繰り返していたことが判明し、辞任に追いこまれた。枢機卿は当時、性犯罪を最後まで否定したが、バチカンによって辞任に追い込まれた。グロア枢機卿の性犯罪発覚後、オーストリアでは多くの信者たちが教会から脱会していった。
枢機卿はローマ法王に次ぐ高位聖職者だ。その人物が過去、未成年者に性犯罪を繰り返していたのだ。当時のローマ法王ヨハネ・パウロ2世は調査団をウィーンに派遣し、真相の解明に乗り出すなど、その対応に苦慮している。
ロンバルディ報道官は否定したが、枢機卿の中には過去、小児性愛者がいたし、未成年者への性的虐待事件は起きている。その意味で、イタリア日刊紙記者の記事は正しい。ただし、同報道官のために弁明するならば、グロア枢機卿の事件当時はナバロ・バルス氏がバチカン報道官だったので、ロンバルデイ報道官自身は同件について一切か関わっていなかった。だから、事件を正確には覚えていなかっただけだろう。
イタリア日刊紙によると、フランシスコ法王は「(約41万4000人の)聖職者の2%が小児性愛者」と語ったというが、その発言の真偽はここでは問わない。「2%」とすれば約8000人の聖職者が小児性愛者ということになる、一般社会と聖職者社会の小児性愛者率を比較しても意味がないだろう。神の教えを説く聖職者の2%が小児性愛者ということは、それだけで十分に異常だ。
フランシスコ法王は組織犯罪グループ、マフィアに対して戦いを宣言したが、法王の足下の教会関連施設に、神父から司教、大司教から枢機卿まで小児性愛者が潜伏し、未成年者へ性的虐待を犯す危険があるのだ。繰り返すが、性犯罪は窃盗、詐欺罪とは違い、重犯罪だ。その犯罪を過去、教会側は隠ぺいしてきた。教会組織の解体を要求されたとしてもバチカンには本来、弁解の余地はないのだ。
(ウィーン在住)