中国崩壊のシナリオ、不動産バブル破裂は必至 川島博之氏
東京大学大学院准教授 川島博之氏(上)
5万部を突破した近著『戸籍アパルトヘイト国家・中国の崩壊』の中で、不動産バブルの崩壊と黒字貿易の減少が中国崩壊シナリオの端緒になると指摘しているが。

かわしま・ひろゆき氏 1953年生まれ。東京大学大学院農学生命科学研究科准教授。専門は環境経済学、システム農学。農業から見たアジア経済に詳しい。著作に『農民国家・中国の限界』や『戸籍アパルトヘイト国家・中国の崩壊』など多数。
まさに日本がバブル崩壊したのと同じだ。中国は輸出で儲(もう)け、国内には貿易黒字で金が貯(た)まっていった。それが不動産に流れて高騰し、ますます不動産投資に拍車が掛かった経緯がある。日本の不動産バブルと同じだ。
所有するマンションが3倍になったとか、都市に住むアッパーミドルぐらいまでは、皆その恩恵を受けている。
貿易黒字の問題は、日本も米の圧力が加わって以後、ほぼ横ばいになった。中国もこれから横ばいに推移するだろう。
そうすると新たなお金は入ってこなくなる。ところが人間は愚かな動物で、現在の流れはこれからも続くと思う。
その幻想がバブルを弾(はじ)かせるか。
中国の貿易は2年ぐらい前から横ばいになっているのに、不動産だけは強気でいく。当然、どこかで乖離(かいり)が起きる。
バブル崩壊は必至か。
必至だ。習近平国家主席はそれを抑えたいがために、非常に強い権力を行使して、不動産売却に歯止めをかけている。売れば下がり、不動産市場が凋落(ちょうらく)するのは必至だからだ。その意味では、不動産を持っていても換金性が小さい。
造りも悪く日本だと5000万円程度のマンションが1億円、場所によっては2億円だ。しかも、空気が汚く、それほど交通の便も良くない。それが億ションとなれば、どだい下がるしかない。3分の1に下がってもおかしくない。
日本のバブル崩壊では銀行が抱えた不良債権が110兆円規模と、金融機関を直撃し、長い経済低迷を余儀なくされた。
そうした大きな影響が中国でも出るだろう。金融界の人たちも、そうした認識だ。
次にリーマンショック並みの大きな金融混乱が中国では起こり得る。
マクロの目で見ると、なぜ習氏が独裁に走らないといけないかといえば、そういうところをパワーで抑え込もうというわけだ。
そのため、こわもて政権が必要だというコンセンサスが、胡錦濤前政権の終わりあたりからある。油断していたら、とんでもないことになると。
中国はそうした国家危機を認識しているのか。
かなり認識していると思う。だから習氏のブレーンである劉鶴氏に「これからは急回復するV字形ではなく停滞が長引くL字型」と言わせている。しかし、遼寧省ではマイナス成長が起こっているが、民衆はまだまだと思って投機行動に走っている。
習氏といえども、末端まで抑え切れてはいない。今は習氏に対し面従腹背だが、何かあるとがらりと局面が変わる。その意味では怖いところを持っている国だ。
私は習氏と同じ年齢だが、一日でも長く生きたいと思っている。習氏が最後にどうなるか見てみたい。かなりの確率で、習氏は畳の上で死ねない。
(聞き手=編集委員・池永達夫)










