フジモリ元大統領が退院


12年ぶりに自由の身に

 南米ペルーからの報道によると、フジモリ元大統領(79)が4日夜、首都リマ市内の病院を退院した。フジモリ氏は、在任中に関与したとされる人権侵害の罪で禁錮25年の刑に服していたが、昨年12月24日に恩赦を受けたため、収監先の警察施設には戻らず12年ぶりに自由の身となった。

フジモリ氏

4日、リマ市内の病院を退院したフジモリ元ペルー大統領(中央)(EPA=時事)

 フジモリ氏は、昨年12月23日に血圧低下と不整脈を訴えて入院、恩赦発表後もそのまま入院生活を続けていた。

 フジモリ氏は、車椅子に乗った状態で国会議員で次男のケンジ氏らに付き添われて退院。病院の外で待ち受けていた支持者や報道陣に手を振る場面もあった。

 フジモリ氏の恩赦をめぐっては、汚職事件で国会決議による罷免危機にあったクチンスキ氏とケンジ氏との間で裏取引があったとの臆測が出ている。実際、ケンジ氏を含む10人の国会議員が12月21日の投票を欠席、罷免が成立しなかった。

 ノーベル文学賞作家のバルガス・リョサ氏らが恩赦に反対しており、恩赦の取り消しを求めるデモが続いている。国連の人権問題専門家からも「恩赦は政治的な意図によるもの」との批判が出ている。

 フジモリ氏は、南米初の日系大統領として1990年に就任すると、「フジモリショック」と呼ばれる政治手腕で左翼ゲリラ撲滅や経済成長を実現させたが、2000年に失脚、日本に事実上亡命した。その後、05年に大統領選出馬を目指してペルーに向かったが、経由地のチリで拘束され、07年にはペルーに身柄を引き渡された。10年に在任中の人権侵害事件に関与した罪で実刑判決が確定した。

(サンパウロ綾村悟)