どう止める北の核、2次的制裁の対象広げよ ジョセフ・デトラニ氏

危機のアジア 識者に聞く(3)

元米朝鮮半島和平担当大使 ジョセフ・デトラニ氏

核・ミサイル開発を続ける北朝鮮に対して、トランプ米政権は最大限の圧力で対応している。

ジョセフ・デトラニ氏

 ジョセフ・デトラニ氏 米ニューヨーク大卒。中央情報局(CIA)で長年勤務し、2003年に朝鮮半島和平担当特使、05年に同大使。10年には国家情報長官の特別顧問を務めた。

 トランプ大統領は北朝鮮問題を解決する必要があると強く感じており、積極的に取り組んでいると言える。制裁の実施など必要なことは全て行っているし、昨年のアジア歴訪で北朝鮮への圧力強化を各国に求めたのも評価できる。

 トランプ氏はまた、軍事力行使を含む「全ての選択肢がテーブルの上にある」と明言している。国の指導者は市民を守る義務があり、自国や同盟国に脅威が差し迫っている場合には、それに対応しなければならない。外交努力だけで北朝鮮に核を放棄させられればいいが、非核化に応じなければ、拡大する脅威を防ぐために軍事的な選択肢を真剣に検討せざるを得ない時が来るかもしれない。

北朝鮮の核開発を止めるのは難しいのか。

 ここ数年で北朝鮮は核・ミサイル技術を大きく進展させた。非核化は2、3年前と比べて、はるかに難しくなっている。核実験も6回行っており、すでに20発以上の核兵器を持っている可能性がある。これは米国やアジア諸国にとって本当に懸念される事態だ。金正恩朝鮮労働党委員長の哲学は、核兵器が抑止力になるというもので、米国や世界各国に核兵器保有を認めさせようとしている。

米国はどのような政策を取ればいいのか。

 米国が現在行っている圧力、制裁の強化は正しい政策だ。一方、北朝鮮が非核化を約束すれば、対話の選択肢も出てくる。

ティラーソン国務長官をはじめ、米政府内には対話を模索する動きもある。

 北朝鮮が核・ミサイル実験を続けている現段階では対話できない。挑発行動が続くようなら圧力を掛けるべきだ。もし対話するなら、最終目標が非核化でなければならない。

 北朝鮮を核保有国として認めるのも重大な間違いで、大惨事に繋(つな)がる。核不拡散体制が揺らぎ、テロリストの手に核兵器が渡る可能性が非常に高くなるからだ。我々が求めているのは朝鮮半島の非核化で、核保有は決して受け入れてはならない。

中国企業や銀行に対するセカンダリー・サンクション(2次的制裁)は効果を上げられるのか。

 非常に効果的だ。制裁は実施されてこそ効果を発揮する。続けることが重要だ。中国だけでなく、北朝鮮と取引している他の国にも2次的制裁を科す必要がある。

米連邦議会では中国の大手国有銀行に対する2次的制裁を主張する議員も多い。大手銀行に対する制裁についてどう考えるか。

 大手銀行が北朝鮮の違法な取引に関わっているという証拠があれば、2次的制裁を科すことも考えなければならない。ただ、そのためには多くの情報を集めることが先決だ。

(聞き手=ワシントン・岩城喜之)