中朝の脅威、憲法9条改正で対応を ジェームズ・ショフ氏
カーネギー国際平和財団上級研究員 ジェームズ・ショフ氏(下)
トランプ米政権下における日米関係をどう見る。
トランプ大統領は安倍晋三首相を信頼しており、発言にもよく耳を傾けるなど非常にいい関係を保っている。米国は「自由で開かれたインド太平洋戦略」を基本的なアジア戦略にしたが、これももともとは安倍首相が提唱したものだ。
ただ、東南アジアに対するアプローチには若干の違いが見られる。安倍首相は多角的アプローチを考えているが、トランプ氏はあまりそうした思考を持っていない。その部分で、まだ安倍首相はトランプ氏の考え方を変え切れていない。
「自由で開かれたインド太平洋戦略」についても、日米が全く同じ考えを持っているとまでは言えない。日本が提唱した同戦略は日米のほか、インド、オーストラリアを中核にしているのが特徴だが、ティラーソン国務長官の発言と国家安全保障戦略を見る限り、「自由で開かれたインド太平洋戦略」に対する米国の具体的な考えは明確になっていない。インドやオーストラリアを戦略に加えることも優先度は高くないとみている。
アジアでは北朝鮮や中国による脅威が高まっているが、これに対応するため日本は憲法改正をすべきだと考えるか。
憲法改正は日本が決めることだが、日本人が改正を望むなら米政府も支持するだろう。私個人としては9条は改正した方がいいと考えている。
具体的に9条をどう改正すればいいのか。
まず自衛隊の存在を明記することだ。集団的自衛権の行使を明確にすることも必要になる。集団的自衛権については、2015年に安全保障関連法が成立して、最高裁も違憲としていないため、合憲との判断が出たと私は解釈している。ただ、違憲との意見が一部あるので、こうした議論をはっきりさせるために改正した方がいい。憲法改正に対してアジアの一部が懸念しているとの声もあるが、明確に定義した方が他国にとってもいい。他にも改正が必要な部分はあるが、教育無償化や環境権を憲法で定めるという考えは、米国からすると分かりにくい。
敵基地攻撃能力についてはどうか。
敵基地攻撃能力は正当防衛だと思うが、どの段階なら攻撃が可能で、どの段階ならできないのか分かりにくい。議論を深める必要がある。
日本は北朝鮮の脅威にどう対処すべきか。
陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の導入など、ミサイル防衛が非常に重要だ。また敵基地攻撃能力を持てば、他国が先制攻撃を仕掛けてくる確率は減り、北朝鮮に対する抑止力を高めることに繋(つな)がる。米国と洗練された訓練を行えるようになるメリットもある。
中国が提唱するシルクロード経済圏構想「一帯一路」はどう見る。
経済面ではいい影響もあるかもしれないが、中国が影響力を拡大し、アジアの国を支配しようとする意図があることには注意しなければならない。
(聞き手=ワシントン・岩城喜之)