防衛省、自衛官獲得に奮闘
女性隊員増へ体制整備
少子化問題が深刻化する中、国内の多くの企業が若手の人材獲得に頭を抱えている。国を守る役割を担う自衛隊も例外ではない。防衛白書によると2014年度以降、自衛官候補生(任期制自衛官)の応募人数と採用人数は4年連続で減少となっている。この人員不足解消のためにどのような対策が行われているのか、現場での取り組みを取材した。(社会部・川瀬裕也)
漫画やアニメキャラなど若者向けメディアで発信
14年度以降自衛官候補生の採用人数は、防衛省が設定した目標に達していない。防衛白書によると、14年度、3万1361人だった自衛官候補生の応募人数は、17年度には2万7510人にまで減少。そのうち採用者は、陸海空合わせて7513人で、目標の9404人には2000人近くも足りない。
東京都の自衛官募集の総合窓口である東京地方協力本部(東京地本)募集課長の吉田修造1等陸佐は、「今後も自衛官の減少が続くと有事の際や、大規模な災害が発生した場合に対応できなくなる恐れがある」と危機感をあらわにした。
自衛隊員採用対象の18歳から26歳までの人口は少子化に伴い、17年度には1107万人と、ピーク時に比べて600万人ほど減少している。しかも今後その減少傾向はさらに激しくなる。
これを受け、防衛省は10月から自衛官の採用年齢の上限を27歳未満から33歳未満に引き上げた。吉田氏によると、同月末時点で東京地本には、すでに26歳以上の応募が30件近く来ており、早くも効果が現れている。元自衛官からの応募が多いことが特徴だ。
また吉田氏は募集に関して、「『体力的にキツそう』『危険な仕事なのでは』といった声をよく聞くが、隊員はそれぞれ適性に合わせてさまざまな職に従事していることや、自衛隊は日ごろから人一倍、安全管理を徹底している『人を大切にする組織』であることなどを説明している」とした上で、「こういったマイナスイメージをいかに払拭(ふっしょく)できるかがカギ」と語った。
最近では、自衛隊での訓練を生かした災害時の知恵などが書かれた本や、ライフハック動画、アニメのキャラクターを使用したポスターや漫画なども積極的に募集に活用し、若者の感性に合うように工夫している。
吉田氏は「自衛隊には多くの装備品や設備があるが、最後に人を救えるのは人間。人がいないと最後の最後は助けられない」と人材確保の重要性を強調した。
少子化問題を乗り切るためのもう一つの対策として、近年力を入れているのが、女性自衛官の新規獲得だ。同省が昨年4月に発表した「女性自衛官活躍推進イニシアティブ」には、性別にかかわらず、意欲と能力・適性に基づいて各自衛官を適材適所に配置することや、育児休業の取得推進や庁内託児所の整備を進めることなどを盛り込んでいる。
同省人事教育局・人材育成課の松浦紀光・予備自衛官室長によると、現在6・5%の女性隊員の割合を30年までに9%以上にすることを目標に、さまざまな体制整備を進めているという。また護衛艦の女性艦長や女性パイロットの誕生などもあり、同省は国民にそれを積極的にPRしている。
その結果、女性自衛官候補生の採用人数は、13年度710人だったものが、17年度には1204人と500人近く増加した。
「女性自衛官に来てもらうためには、風呂などの生活環境や、育休・職場復帰制度などをしっかり整備していく必要がある。その努力は一般企業と同じ」と松浦氏は語る。
また、同時にAI(人工知能)の導入や、より少ない人数で能力を落とさずに運用できる装備品(汎用護衛艦など)の導入にも来年から着手する予定。
先月行われた自衛隊観閲式で安倍晋三首相が「国民の9割は敬意をもって自衛隊を認めている」とあいさつしたように、国民の自衛隊に対する理解度や好感度は高まっており、それをどう募集に繋げていくかが今後の課題となっている。







