辺野古「聞く力」アピール 官房長官が沖縄初訪問
きょう玉城知事と会談予定
岸田内閣で沖縄基地負担軽減担当相を兼務する松野博一官房長官が5日、就任後初めて沖縄県を訪れた。懸案の米軍普天間飛行場(同県宜野湾市)の名護市辺野古移設に向け、地元との信頼関係を構築するのが狙い。原則的な対応が目立った安倍・菅政権と対照的に、岸田政権は看板の「聞く力」をアピールしながら理解を求めていく方針だ。
「沖縄は戦後75年以上たっているにもかかわらず、大きな基地負担を県民の皆さんに担ってもらっていることをしっかりと胸に刻みながら、着実に基地負担軽減を一歩一歩進めたい」。松野氏は5日、県営平和祈念公園(糸満市)で献花後、記者団にこう語った。
安倍政権は辺野古沿岸部の埋め立てを推進し、基地問題の進展と沖縄関係予算を結び付ける「リンク論」を展開。「アメとムチ」で臨む姿勢を鮮明にし、菅政権もこれを継承した。
岸田文雄首相は10月の所信表明演説で、日米で合意した辺野古移設計画を堅持する方針を表明。同時に「丁寧な説明、対話による信頼を地元と築きながら負担軽減に取り組む」と強調した。温和な性格で知られる松野氏が前面に出ることで建設工事が順調に進めば、と期待しているようだ。
松野氏は6日に玉城デニー知事と会談する予定。一連の日程を通じ、引き続き経済振興に努める意向を示し、「対話重視」を訴える。
今回の衆院選では名護市を含む沖縄3区で自民党候補が2012年以来の勝利。辺野古移設阻止を掲げ、玉城知事を支える政治勢力「オール沖縄」の退潮が顕著となった。来年に名護市長選や知事選を控え、政府関係者は「今度はこちら(移設推進)が民意だと言える」と意気込む。
ただ、辺野古移設の実務を担った杉田和博官房副長官(当時)や和泉洋人首相補佐官(同)が政権を去り、首相官邸の推進力低下を指摘する声が出ている。政府関係者は「沖縄政策が空白地帯になった」と語る。
現場海域で確認された軟弱地盤の存在により、工事の進展は不透明。総工費は膨張する見込みで、普天間の返還時期は30年代以降とみられている。沖縄戦の激戦地となった本島南部から埋め立て用土砂を採取する計画には、戦没者の遺骨が混入する恐れがあるとして反対意見が強く、移設問題の行方はなお見通せない。