繰り返された県民投票、愚民迎合より悪質な詐欺

歪められた沖縄戦史 慶良間諸島「集団自決」の真実
上原 正稔 (45)

 「反戦政治家・大田昌秀氏の正体」と表紙を飾るセンセーショナルな特集記事が出た。ほかでもない、1996年10月号の「文藝春秋」だ。取材班は作家の真神博氏の下、当時、朝日新聞をはじめとする中央のマスコミが大田昌秀知事を熱に浮かされたように賛辞を呈し、虚像が増幅されたことを痛烈に批判した。

300

大田昌秀知事を特集した文藝春秋の1996年10月号

 糸満市に建設された大田氏自慢の「平和の礎(いしじ)」は、筆者が温めてきた「沖縄戦メモリアル運動」の完全盗作であり、そのことを知る関係者、特に屋宜具志頭(やぎぐしかみ)村長らからも「盗作」だとの証言を取り、きちんと裏付けている。

 91年9月13日、占領シンポジウムの席で大田氏が筆者に殴り掛かり、前代未聞の知事の酒乱事件が起きた。取材班がそのことも関係者に確認すると、次々と証人が出てきた。大田氏が毎晩のように高級ナイトクラブに出掛けることは、誰でも知っていることで酒癖が悪いことも有名だ。文藝春秋の取材班は大田氏の化けの皮を剥がして、丸裸にした。

 さて、文藝春秋の特集が発表された当時の96年9月8日、大田知事は県民投票を行った。「米軍基地の整理縮小」と「日米地位協定の改正」に賛成か反対かの二者択一というもの。91万人有権者(投票率60%)のうち、48万3000人が賛成、反対が4万6000人で、沖縄タイムス、琉球新報も大田知事も“圧倒的勝利”と自画自賛した。常識ある者には戦争と平和のどちらかを選びなさい、というのと同じで全く無意味、いや全くの詐欺だ。この投票に4億8000万円が浪費されている。

 そして大田知事は直ちに「圧倒的勝利」の看板をブラ下げて橋本龍太郎首相と面会し、財政破綻している沖縄を救うための協力金を約束させ、拒否していた代理署名を応諾したのだ。共産党はじめ革新政党は愕然(がくぜん)とし、2紙は呆(あき)れ果てたのだ。それは彼らが大田氏の正体を知らなかったからだ。

 つい先日の2月24日、玉城デニー知事の下で全く似たような県民投票が行われた。結果は辺野古埋め立てに反対71%、賛成19%、どちらでもない9%。常識的に数字を見れば、基地を選ぶか、基地のない島を選ぶかの選択にすぎず、全く無意味、いや、5億5000万円の無駄遣いであり、詐欺だ。実際、玉城知事は大田知事に倣って首相に会い、「話し合い」という名の恐喝を進めようとしている。

 しかしながら、ここで紀元前5世紀のアテネの直接民主主義を思い出そう。奴隷制の下での民主主義はポピュリズム(愚民迎合)よりも悪く、フェイクニュースを続ける2紙などのマスコミに支配されている。