沖縄2紙「軍命関与」報道、 曽野綾子氏の予言が現実に

歪められた沖縄戦史 慶良間諸島「集団自決」の真実
上原 正稔 (39)

 2007年3月30日、文科省は教科書から「沖縄の集団自決の軍命の記述を削除すべし」との検定意見を出したところ、翌日から琉球新報と沖縄タイムスは激しく反発し、その後、連日猛烈なキャンペーンが張られ、全市町村議会が両紙の抗し難きキャンペーンを受け「集団自決に軍命あり」の決議を出すことになった。

 6月22日の琉球新報は、県議会も「検定撤回を求め意見書を全会一致で可決。集団自決に軍関与は事実」との大きな見出しで報道している。タイムス報道も全く同様だ。

 この連載の第28回で曽野綾子氏が「沖縄の二つの新聞が心を合わせれば、世論に大きな指導力を持つ」と予見していたことが現実のものになったのだ。沖縄の新聞社の記者から、「俺たちが次の知事を決めるのだ」という言葉を筆者は何度も耳にした。

 県議会の意見書は検定意見書について「沖縄戦における“集団自決”が日本軍の関与なしには起こり得なかった」と記されている。そこには、赤松嘉次氏と梅澤裕氏のことについて一切検討することもなく、ご両人の長年の耐え難き屈辱の人生に思いを馳(は)せる言葉もない。新報とタイムスの意のままに操られている“政治屋”と呼ばれるべき議員たちの無残な姿があるだけだ。

 「新沖縄県史―新沖縄戦」の「沖縄戦と教科書」という項で、山口剛史琉球大学准教授は、“集団自決・強制集団死”について、県議会の意見書を詳しく紹介し、この運動の盛り上がりで9月29日の宜野湾海浜公園に11万人、宮古・八重山に6000人も集結したと豪語している。この「主催者発表」の数字がトンデモない誤謬(ごびゅう)であることは後日、数学的に証明しよう。

 さて、「教科書検定意見撤回運動」の中で、仲里利信県議会議長(当時)が「日本兵が来て、子供が泣いていると、敵に殺されるから、毒入りおむすびを食え、と強要した」とあるが、それは沖縄戦の最終段階の南部戦線のことだろう。一を知って千を語るものであり、全く無意味だ。山口氏はこう論述する。

 <日本軍の命令・強制により住民は死に追いやられ、「集団自決」は沖縄戦においては発生しなかった。「集団自決」とは「日本軍による住民殺害」と同質同根のものであることが、座間味、渡嘉敷島の研究の深化により確認された。その中で曽野綾子の『ある神話の背景』についても自決命令があったという証拠も、なかったという証拠も発見できなかったというだけである>

 彼が『ある神話の背景』を読んでいないのは確かだ。