「辺野古」県民投票 「安保」要の宮古島、宜野湾、石垣、沖縄、うるま市が不参加

 米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古沖の埋め立ての賛否を問う県民投票(2月24日実施)は2月14日の告示まで1カ月を切った。ただ、安全保障面で深く関わる五つの市が不参加を表明しており、県内有権者の約3割が投票できなくなる可能性が高くなった。(沖縄支局・豊田 剛)

市長ら中立性・実効性に疑問

合わせた有権者数全体の3分の1に

県民投票で問う「辺野古沖の埋め立て」の賛否

宜野湾市民から県民投票の不参加要請を受ける松川正則市長(右)=7日、宜野湾市

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 県民投票の実施に必要な補正予算案を採決した全41市町村のうち、6市1町が反対した。それを受けて、首長が不参加を表明したのは、宮古島、宜野湾、石垣、沖縄、うるまの5市だ。

 5市の有権者数(昨年12月1日現在)は約36万7000人で、県全体(約116万人)の約32%に当たる。このままだと3分の1が投票できないことになる。

 条例は地方自治法の規定に基づき、投開票事務を「市町村が処理する」と規定している。必要経費は県が全額負担して市町村に交付する形だが、市町村でも予算計上する必要がある。しかし、5市では議会が県民投票関連予算の計上を認めず、「市議会の意思を尊重」し、事務を実施しない方針だ。

 「今回の県民投票は県民によって発案され、地方自治法の規定に基づき条例の制定が県に請求されたものだ」。玉城デニー知事は11日、「条例改正はさまざまな課題があり難しい」ことを認め、5市が不参加となっても県民投票を実施する方針を明らかにした。

 県は対抗策として、是正勧告を出し、市長権限で予算を計上するよう求めた。県民投票の署名活動をした「県民投票の会」(元山仁士郎代表)は2択以外の選択肢の追加も検討するとしたが、県は受け入れない方針だ。

県民投票で問う「辺野古沖の埋め立て」の賛否

県民投票の実施を訴える「辺野古」県民投票の会の元山仁士郎代表(左)ら=7日、宜野湾市役所前

 条例改正や日程延期は現実的に厳しいことから、県は引き続き該当市に是正勧告を迫るとみられる。ただ、参加を拒否した5市長は「県の対応は強権的だ」「県は中立性に欠ける」などと反発し、翻意させるのは難しい情勢だ。

 一般県民からも県民投票に参加しないよう求める動きが出ている。宜野湾市民有志の会(安村恵美子代表)は7日、宜野湾市役所に松川正則市長を訪ね、県民投票不参加を貫くよう要請した。

 要請で、「普天間飛行場の危険性除去の具体策を示さない県民投票は意味がない」と指摘。また、間接民主主義における地方議会および首長の判断を重んじない「県の強権的な手法」に「違和感を覚えた」と訴えた。さらに、県民投票予算5億5000万円は、①一人親世帯の医療費助成②子供の貧困対策③県立病院医師派遣補助――などに使用し、「県民生活に目配りした政策を取るべきだ」と求めた。また、他の市でも同様の有志による不参加要請があった。

 移設当事者である宜野湾市の判断は重い。松川市長は10日、記者会見で知事の政治的中立性に疑問を呈するとともに、「知事から普天間問題の原点である危険性除去について全く発信がない」ことを疑問視した。

 石垣市の中山義隆市長は、地方自治法第252条17の2には条例を制定する際には県が市町村長と適切な協議を行うよう定めているが、そのような協議が行われていないことを指摘している。

 うるま市の島袋俊夫市長は、県に対して単純に賛否を問う2択の選択肢を「やむを得ない」と「どちらでもない」を含む4択にすることと、投票期日の変更を求める要請書を15日、県に提出した。

 沖縄市には米空軍嘉手納基地、うるま市には海兵隊司令部がある。さらに、石垣市と宮古島市は、国境に近い離島で、常に安全保障の危険に晒(さら)されている地域だ。こうした安全保障上、重要な地域がこぞって参加しないという“民意”を「県全体で捉えていく必要がある」と砥板(といた)芳行石垣市議は指摘する。

 普天間移設をめぐる住民投票は過去1度あった。1997年12月に名護市で行われた「普天間返還に伴う代替海上ヘリポート建設の是非を問う市民投票」だ。西田健次郎元県議は、「公職選挙法適応外だからボールペンなどの粗品を配ったり、飲食物を提供するなど、賛成派反対派ともに激しい活動をした」と振り返る。その上で、公平な選挙は期待できず、投票結果に意味を持たない県民投票はすべきでないと主張している。