高校生らが農業やITのビジネスモデルを提案
県立球陽高校、“厄介植物”のツルヒヨドリの有効利用
優勝は国立沖縄高専、VRを使ったサンゴ礁育成ゲーム
「厄介者のツルヒヨドリの有効利用」「グリーンAIとゲームを組み合わせたサンゴ育成教育システムの開発」など、高校生らは、農業やITの分野で独創的なビジネスモデルを提案した。沖縄県の体験型理科教育の発展と起業家精神の養育を目的とした高校生の研究発表会が、このほど、恩納村の沖縄科学技術大学院大学(OIST)で開催された。(沖縄支局・豊田 剛)
恩納村のOISTで、在沖米国大使館主催の研究発表会
ヤング代理大使「失敗しても諦めず続けることが成功に」
「厄介者の特定外来生物でも何か使い道があるのではないか」
こうした着想から、特定外来生物ツルヒヨドリの効果的な利用方法について研究したのは沖縄県立球陽高校(沖縄市)2年生の3人だ。城間元斗さん、島充希さん、冨名腰義人さんは、「厄介者が役に立つ!特定外来生物を熱中症予防に利用しよう」と題するプレゼンテーションを流暢(りゅうちょう)な英語で行った。
環境省や県は、ツルヒヨドリが世界自然遺産の推薦地やんばる地域などへ侵入することを食い止めようと、除去活動に力を入れている最中だ。「生態系や農作物に影響を与えている厄介者の植物であっても何らかの効果があるかもしれない」と考えた3人は、ツルヒヨドリに関する外国の論文を見つけ、化学成分を分析する中で、熱中症を予防できる有効成分を多く含むことを発見した。
そこで、3人は植物を抽出してティーにすることを考案した。「味は薄いウーロン茶や紅茶に近く、生臭さもなく、香りもいい」ことに気付き、商品化計画を立てた。また、茎の繊維は簡単に取れる上、丈夫なため、芭蕉(ばしょう)布のような生地が作れるのではないかと期待を示す。
「ツルヒヨドリを駆除するには20年はかかると想定する。駆除が完了すればビジネスも終わるが、沖縄の環境に役に立つ」と先を見据える。ツルヒヨドリは植えることもできず、刈り取ったものを移動させることができないため、「環境省に書類で許可申請し、企業とも連携してビジネスに発展させていきたい」と意気込んだ。
彼らが発表したイベントは、「SCORE!―サイエンスinオキナワ:起業のための研究能力サイエンス・フェア」。在沖米国大使館が主催するもので、OISTを会場に今年で8回目の開催となった。
当日、発表したのは、書類審査を通過した県内の高校の12チーム。英語によるプレゼンテーションは義務付けられていないが、英語が公用語のOISTが会場であることや、外国人審査員へのアピールにもなるという理由から、大半は英語で発表した。球陽高校の3人は審査員の高い評価を得て、2位に輝いた。
優勝したのは国立沖縄工業高等専門学校(名護市)の外間円佳さん、田仲風花さん、山城翔さんによるチーム。「グリーンAIとゲームを組み合わせた教育システムの開発-リアルタイム・サンゴ育成ゲーム-」を発表した。グリーンAIとは、AI(人工知能)を活用し、地球温暖化や大気汚染への対策、生物多様性の保全、エネルギーの最適・均衡的配分などに取り組もうという試み。VR(仮想現実)映像を使ってサンゴ礁を育成していくゲームを英語で紹介した。
サンゴ礁生態系保全の国際協力の枠組みである国際サンゴ礁イニシアティブ(ICRI)は、昨年を「国際サンゴ礁年」に指定。国内最大のサンゴ礁地帯である石垣島周辺の石西礁湖はここ数年、サンゴ礁の9割が白化しており、将来的に死滅する可能性がある。ゲームを通して、環境問題についての関心を高めてもらおうというアイデアやVRゲームに昇華させたプログラミング能力が高く評価された。3人には米国研修旅行が授与された。
主催者を代表して、ジョセフ・ヤング駐日米臨時代理大使は、「個人の評価は失敗から学び、立ち上がることによってなされるもので、失敗はその人を失敗させない」というメッセージを高校生に送った。
ヤング氏は、「ディズニーの最初のキャラクター、うさぎのオズワルドの失敗がなければミッキーマウスは誕生しなかった」と解説。トーマス・エジソン、スティーブ・ジョブズやカーネル・サンダースなど、過去の偉人は数え切れないほどの大量の失敗を重ねてきたが、諦めずに続けたことが成功につながったと説明した。











