琉球王国という幻想 中朝が反日反米に利用

《 沖 縄 時 評 》

元は米が仕掛けた分断工作 観光誘致目的の俗称

 「沖縄はかつて琉球王国という独立国だった」

 多くの日本国民がうっすらと思い込んでいることだろう。沖縄県民はさらに踏み込んで、きらびやかな琉球王国時代をノスタルジックに追憶している。実際には近代国家でいうところの琉球王国という独立国家は存在しなかったにもかかわらずだ。そもそも「琉球王国」という名称自体が幻想である。

琉球王国という幻想 中朝が反日反米に利用

世界遺産にも「琉球王国」と刻まれている=沖縄県今帰仁村の今帰仁城跡

 「琉球王国」というネーミングは、琉球政府唯一の公選行政主席ならびに初代沖縄県知事であった屋良朝苗が、本土復帰運動と復帰後の観光誘致のために普及させた俗称だという。

 これが、「琉球王国は幻想」だとする所以(ゆえん)である。琉球王国の正式名称は「琉球国」なのだ。昔の日本では、「国」は近代国家の意味する「国」とは全く異なった。琉球国は薩摩国、大隅国、日向国のように日本の一行政単位にすぎなかった。その上、江戸時代の琉球国は薩摩藩の完全な支配下にあった。「琉球国が独立国」であるとしたのは主に明や清との貿易を続けるための薩摩の偽装工作だった。現代日本人がその偽装工作をいまだ信じ続けていることは滑稽にすら思える。

 「琉球国」と「琉球王国」。少しの言葉の違いであるが、この違いが冒頭の重大な誤解を生んだ。この誤解がさらに「琉球王国には日本人とは違う先住民が住んでいて、日本に侵略された」という「意図的な誤解」を生んだ。その上、この誤解が国連で流布され、国連から日本政府への「沖縄の人々を先住民として認めるように」との再三にわたる勧告につながった。沖縄は日本から切り離されそうになっているのだ。

 その根底に「琉球王国という幻想」に基づく誤解があると筆者は見ている。「琉球王国という幻想」が危険な理由は琉球独立論に勢いを与えかねないためだ。

 著名な歴史家であるアーノルド・J・トインビーは「自国の歴史を忘れた民族は滅びる」と言った。日本は敗戦により自国の歴史を忘れたどころか、外国人の歴史観で歴史を見るようになった。

◆すり込まれた歴史観

 「歴史観は時の権力者により定義される」とよく言われている。そうだとすれば、戦後の日本における歴史観は占領軍が定義したと考える方が自然であるし、事実そうである。連合国軍総司令部(GHQ)は戦後の日本に自虐史観をすり込んだ。一方の沖縄では被害者史観がすり込まれた。「軍国主義の日本から住民を救い、民主主義を教えたアメリカ」という虚像を拡散した。日本国民と沖縄県民はすっかり騙(だま)された。

 沖縄ではこの歴史観を基に、GHQによる反日工作が行われた。アメリカはアジアの戦略拠点としての沖縄の重要性を見抜いていた。沖縄をグアムのような直接統治領にしたかった。そのため、日本本土と沖縄を分断する必要があったのだ。この分断工作をメディアと教育が後押しした。

 沖縄戦は「日本軍による住民被害」として語られるケースが多い。沖縄戦では多くの沖縄県民が日本軍人として共に戦ったのに日本軍の被害者だったように県内メディアや教育で流布されている。アメリカと戦ったはずが、いつの間にか日本軍と戦ったかのように教えられるのだ。ここに横たわる不自然さこそが分断工作の現れだろう。

 アメリカが仕掛けた分断工作は現代では中国や北朝鮮に利用されている。それ以降、反日に反米が加わった。反日、反政府、反米軍の姿勢が県内メディアでは正義ともてはやされる。分断工作の根っこにあるのが「琉球王国という幻想」だ。だから「もともと沖縄は日本ではないから日本政府に従う必要がない」あるいは「沖縄のことは沖縄で決める」というような訴えが支持を集めたりするのである。この工作は沖縄県民の感情に大きく訴え、奏功したと言える。県内出版社から発行されている本のタイトルだけでも日本政府への憎悪が溢(あふ)れていることが見て取れる。沖縄の大手書店が扱うタイトルを幾つか挙げてみよう。

    ・沖縄謀反
    ・ルポ沖縄~国家の暴力
    ・琉球独立は可能か
    ・国権と島と涙
    ・沖縄の乱
    ・沖縄VS安倍政権
    ・沖縄~憲法の及ばぬ島で

 残念ながらこれらの本の著者らは、本土と沖縄の分断工作に見事に引っ掛かっていると断じざるを得ない。一般の人でも「琉球王国という幻想」の話には感情的に反発する。筆者が運営する「グッドニュース沖縄」というローカル紙でこの話題を取り上げたところ、以下の感想をいただいた。

 「『琉球王国という幻想』には驚きました。それが事実だとしても信じたくない感じですね」

◆独立論を勢いづかす

 分断工作は中国古代の「離間の計」というれっきとした兵法である。敵と敵を戦わせて漁夫の利を得ようとする手法であり、歴史上幾度も使われている。大東亜戦争では旧ソ連がアメリカと日本を戦わせるために暗躍していた。日本が弱体化したところで北方領土を奪い取った。中国では毛沢東率いる共産党が蒋介石の国民党と日本を戦わせることで弱体化した国民党を台湾に追い出すことに成功した。本土と沖縄が分断され、争って得をする国はどこなのか、考えなくてはならない。

 以前、筆者は韓国と沖縄の状況が酷似していると指摘した。両者に北朝鮮の工作が浸透しているためだ。韓国は北朝鮮化されようとしている。沖縄では毎年、金正恩委員長の誕生会が盛大に催されている。また先日、在日韓国人が創業した会社の沖縄支店を取材した。何気なく入った事務所の本棚に「金日成逸話集」が堂々と飾られていた。北の主体思想が一般の人たちにも相当浸透していると考えた方がいいのかもしれない。

 繰り返すが「琉球王国という幻想」が危険な理由は、琉球独立論に勢いを与えかねないためだ。日本政府の言うことを全て認めよ、ということではない。ただ、選挙で選ばれた政権は尊重すべきだ。反政府一辺倒の姿勢は危険だ。沖縄が日本の一部でなくなると現在の自由な社会はなくなると考えた方がいい。香港は自由を守るために戦っている。台湾もしかりだ。自由を守るためには沖縄は「琉球王国という幻想」から解放され、日本の一部としての義務を果たさねばならない。本土と沖縄が分断されると得をする国がいることを忘れてはならないのだ。

 知念 章