「マニフェスト選挙」は虚構-プレス民主
「民主党政権失敗の検証」
民主党の機関紙「プレス民主」(11月15日号)が、「民主党政権失敗の検証」(日本再建イニシアティブ著・中公新書)をまとめた日本再建イニシアティブ(船橋洋一理事長)の研究者の話を2㌻見開きで紹介した。
公明党機関誌「公明」(14年1月号)も同書を取り上げ、「これを材料にして今後の日本政治のあり方を」と題する東京工業大学名誉教授・田中善一郎氏の書評を、巻頭記事「合意を形成する力こそ民主政治の基本」(同紙編集部)に関連する巻頭枠3本目に載せた。
政権交代システムがうまく機能しないと国難に陥る。与野党のライバルである両党が扱うのは、政権交代時代にあって明日は我が身の教訓だからだろう。
「プレス民主」で上智大学教授の中野晃一氏(同書「序章民主党の歩みと三年三カ月の政権」の著者)は、「民主党衆院議員へのアンケートでは、2012年の総選挙であれだけ大きく負けた原因について97%が党内紛争や分裂を挙げた」と指摘し、「われわれの結論は、『小沢対反小沢』という属人的対立はあったが、分裂まで至ったのは党や政権の意思決定過程に原因があり、それが属人的対立とリンクしたと見ている」と述べている。
民主党の意思決定過程の問題は、「政策が与党を含む国会の立法過程を経て実現するという認識が弱かった」ことに繋(つな)がる。中野氏は「民主党の議員に共通する『政策通だが頭でっかち』なイメージそのままに、……誰がそのことで汗をかくのか、国会カレンダーをにらんだ緻密な日程のやり繰りなどの認識が決定的に甘かった」と喝破した。
かつて派閥全盛期の自民党を守旧的だと批判し、華麗な履歴・学歴をひっさげた公募候補が民主党に集まった。が、「守旧派」には「汗は私がかきましょう。手柄はあなたにあげましょう」という語録(竹下登元首相)を生んだ政治家修行も含まれた。「誰がそのことで汗をかくのか」という「失敗」は皮肉である。
「マニフェストにガチガチの数値を盛り込みすぎた」との見出しで一橋大学教授の中北浩爾氏(同書「第1章マニフェスト」の著者)は、「われわれはマニフェストそのものに失敗の原因があったと考える。一つは、数値目標や工程表という日本版マニフェストの考え方自体がマニフェストを硬直的なものにした。……しかも、その肝心の数値が、選挙対策などから甘くなってしまった。一部の議員によるマニフェスト作成チームが秘密裏に作るという体制にも問題があった」と指摘した。
一方、「公明」で評者の田中氏は、「国民は民主党のマニフェストに投票したのではない。そもそも子ども手当や高速道路の無料化など、民主党のマニフェストの『目玉』に対しては賛成するよりも、反対する国民のほうが多かったのである(朝日新聞世論調査)」と述べ、「マニフェスト選挙」を問題視する。一種の世直しのように吹聴された選挙スタイルだが、民主党政権が混乱に陥ったのを見れば、危険な虚構だ。
解説室長 窪田 伸雄