秘密保護法成立で広報を欠いた「自由民主」
「戦前」批判こそ時代錯誤
特定秘密保護法が成立した臨時国会が閉幕して翌9日、安倍晋三首相は記者会見で「丁寧に説明していきたい」と反省の弁を語った。自民党の機関紙「自由民主」は同法案に淡泊だった。法案了承(10月22日号)、衆院通過(12月10日号)、成立(12月17日号)を2面で報告したにすぎない。
ゆえに内容説明も、「同法案は日本版NSC(国家安全保障会議)の設置に合わせ、『特定秘密制度』を整備し、わが国の安全保障に関する情報を保護するのが目的。行政機関の長は①防衛②外交③特定有害活動の防止④テロリズムの防止――の4分野で特に秘匿する必要のあるものを特定秘密として指定」(10月22日号)など簡潔である。
問題は、「戦前軍国主義の復活」のようなレッテル張りに、反論もなく、広報力を発揮しなかったことだ。意図しないことでも反論しなければ意図ありと対立者は叫ぶ。「戦前」批判を盛んに扇動したのは政党メディアでは共産党機関紙「しんぶん赤旗」が群を抜いた。しかも「戦場に行ったあの時代に戻したらあかん 支部総会で決意 2人を党に迎える」(12月11日付)など「戦前」を煽(あお)って党勢拡大している。
これで機関紙読者や入党者が増えるから煽り続ける。つまり、同法成立後も反対運動は続き、「秘密保護法撤廃へ国民と共に」(12月15日付)など、「撤廃」に向けた見出しは連日躍っている。反原発運動に取って代わった印象だ。
マスコミも騒いだ。朝日、毎日、東京、共同通信の配信を受ける地方紙などは、戦前の治安維持法や軍機保護法などを盛んに取り上げ、秘密保護法で戦前の状態に戻ると思わせる恣意的な報道と論調が目立った。このような一部世論を背景に左翼勢力が反対運動を反戦運動化して国会を囲んだ。反対派の配るビラには「アベクーデター」などという、既に首相である安倍氏がなぜクーデターなのか理屈の合わない、とにかく悪いイメージを植え込む扇情主義的なものもあった。こちらの方が時代錯誤だろう。
しかし、NSC法には賛成したものの、浮動票が頼みの新党である日本維新の会、みんなの党は動揺し、参院では自公の与党だけの賛成になった。秘密保護は必要と基本認識はあったはずの民主党も対決を打ち出し、「プレス民主」は12月6日号で内側のページで反対運動を取り上げ、12月20日号では、これまで1面は有識者の提言を扱うという編集方針を変えて秘密保護法をもってきた。
一方、与党で機関紙上で秘密保護法の必要性について広報したのは、公明党の公明新聞である。「なぜ必要か特定秘密保護法案 大口善徳・党プロジェクトチーム座長に聞く」(10月23日)、「特定秘密保護法案Q&A(上)(下)」(11月29~30日)、「Q&A特定秘密保護法案」(12月1日)など広報に努めていた。「外交・防衛等で用いられる暗号」など何が秘密か分かりやすい。自民党も首相の反省が機関紙上に反映されなければなるまい。
解説室長 窪田 伸雄