「赤旗」に衆院選総括、敗退も歴史的意義と自賛
党内から責任論湧かず、野党共闘を手放さぬ共産党
共産党は、10月末の衆院選挙で公示前の12議席から10議席に敗退し、共闘した立憲民主党は、公示前110議席から100議席を割る96議席の惨敗だった。立民の創党者、枝野幸男代表は辞任を決断し政治責任を取った。
野党共闘を仕掛けた共産党はどうか? 「このたたかいは、最初のチャレンジとして大きな歴史的意義があったと確信する…」「総選挙のたたかいから教訓を引き出し、市民と野党の共闘を発展させるために全力を挙げる…」。共産党機関紙「しんぶん赤旗」(11・2)に載った「総選挙の結果について」(同党中央幹部会常任委員会、1日発表)を見ると、早々と野党共闘の継続を宣言している。
「歴史的意義」を自賛しているように共産主義の価値観や歴史観に基づいて共産党が構築した大義が優先され、党大会決議や党綱領を背景とした方針は同党では常に無謬(むびゅう)で、選挙に負けても党内から責任論が湧かない。このため、野党共闘を進めて敗北しても志位和夫委員長の辞任の“じ”の字も浮かばない。基本政策で矛盾した共闘のパートナー政党が予想外の敗北を喫し党首の進退に至っても関係ないとばかりエールを送る。野党共闘は共産党のためにあると言えるだろう。
実際、昨年1月の党大会決議で「党創立100周年までに野党連合政権と党躍進を実現する強く大きな党の建設」を目指すとあり、野党共闘はその「野党連合政権」を実現する手段だ。いわば2015年の安保法制反対運動から5年の歳月をかけて、「政権参加」「閣外協力」まで認めさせるほど立憲民主党を巻き込み舞台を整えた。
ただ党大会決議では、「850万票、15%以上」を今回の衆院選、および党創立100年の来年夏にある参院選の目標にしている。この点、目標の半分にもならない今回の結果は挫折に他ならず、党指導部に負い目がある。「総選挙の結果について」では「党の力不足」を認め、「得票数は440万票から416万票へ、得票率は7・90%から7・25%への後退」と報告し、「昨年の党大会決定にもとづいて、党の自力をつける活動、党の世代的継承の活動にとりくんできましたが、このとりくみは途上にあります」と釈明した。
この比例票440万から416万への減少は、投票率が53・68%から今回55・93%に上昇していることを踏まえると40万余りの票が離れたのに値する。都道府県別で票が増えているのは東京都だけで61万票から67万票だったが、得票率は10・4%で変わらなかった。小選挙区でより多く立憲民主党候補に協力した共産党は、「比例区は共産党」を連呼したが、共闘効果なく組織力の強い共産票さえ目減りした現実は立共共闘にとって重い結果のはずだ。
日本維新の会が野党共闘に代わって躍進したことに対して、「総選挙の結果について」では、維新の「伸張を招いた一因」は「共闘の大義、魅力を伝えきれなかったこと」と述べている。共闘自体に原因を認めず、今後も野党共闘の「魅力」を宣伝し切れば勝てると考えているわけだ。
しかし、日本経済新聞(11・12)に掲載された世論調査によると、立民が共産との選挙協力を継続すべきかの質問に、「やめるべきだ」56%、「続けるべきだ」25%だった。また立民支持層では6割近くが「やめるべきだ」と答えた。党の方針を無謬とする共産党とのギャップが見て取れる。
しかし、共産党は野党共闘を手放すまいと「赤旗」に選挙後も続々と野党共闘を評価、宣伝する記事を載せ、その大義と魅力を伝える取り組みの力不足をはね返そうと躍起になっている。
編集委員 窪田 伸雄






