「自由民主」常敗区の5小選挙区で初勝利

小沢一郎氏を破った岩手3区など、野党共闘の手痛い誤算

 衆院選挙で小選挙区選挙が始まった1996年以来の四半世紀、自民党が一度も勝てなかった小選挙区で今回当選した選挙区がある。同党機関紙「自由民主」(11・23)は2面に「敵陣の『厚い壁』を突破/史上初!小選挙区で勝利」と題して紹介した。

 立憲民主党・共産党など野党共闘側は自民大物を破った小選挙区では共闘効果を宣伝するが、手痛い誤算については触れない。同紙では自民常敗だった小選挙区で、いかに議席を得たかアピールしている。

 まず「民主党代表などを務め、当選17回を誇る小沢一郎氏」を破った岩手3区・藤原崇氏について。「前回も3万票以上の差で敗れた藤原氏。今回の選挙では新たな作戦を展開した。『#政権交代より世代交代』。SNSにハッシュタグをつけて選挙期間中に繰り返し投稿した。相手の『政権交代』という主張にかぶせる形で世代交代を訴えた藤原氏の作戦は功を奏し」たと勝因を述べた。

 「立憲民主党の前職で9選目を目指すベテラン、中川正春氏が長年地盤としてきた」三重2区の川崎秀人(ひでと)氏についても、父・川崎二郎前衆院議員の「地盤を引き継ぐだけでは厳しい状況にあった。そんなひでと氏が全面に打ち出したのは『世代交代』だった」と、やはり若い有権者に向けたSNSなどのアピールを勝因に挙げた。

 「かつて羽田孜元総理の地盤だった長野3区に立ったのは井出庸生氏。井出氏自身は過去2回、他党から出馬し小選挙区で当選していた」。日本維新の会~民進党~希望の党を経て井出氏は自民に鞍替(くらが)えし当選。

 「愛知11区は自動車メーカーの本社がある豊田市とみよし市を抱える。小選挙区制導入後、労働組合出身の野党候補が6回連続で選挙戦を制してきたが、衆院解散当日に不出馬を表明。選挙戦の構図が大きく変わった」。民主党~民進党を支えた全トヨタ労連の指令で同労組出身の古本真一郎前衆院議員が出馬しないため、「出馬しない意向を示していた」自民の八木哲也氏が急遽(きゅうきょ)立候補し当選した。いずれも候補者や労組が共産との野党共闘と決別し、自民で政策実現をしようと決めた背景がある。

 静岡6区で当選した勝俣孝明氏については、「地元議員や支援団体がフル稼働。…『歴史を変える』と今回の選挙にかける強い思いを訴えてきた」と、地元密着の政治活動、運動の成果で「野党の牙城を崩し」たと強調している。

 編集委員 窪田 伸雄