改憲タスクフォース、国民投票の実現へ運動

「自由民主」、「反対」と「解釈」の厚い壁

 自民党の機関紙「自由民主」インターネット版は16日付で、憲法改正実現本部(古屋圭司本部長)憲法改正・国民運動委員会(新藤義孝委員長)の下で改憲運動を行う「タスクフォース」(TF)を扱った。1日に同党本部でTFの初会合が行われ、「全国を11ブロックに分け、衆参国会議員約50人で構成」し、「各ブロックの担当議員は、各都道府県連に立ち上がる予定の『実現本部』と連携して研修会などを開催」するとの方針を伝えている。

 自民は党是の憲法改正について改憲案で世論を喚起してきたが、今年から党が体制を組んで憲法改正実現に向けた運動に本腰を入れることになる。改憲案では、結党50年の2005年11月に「新憲法草案」、自民が野党だった12年4月には当時の民主党政権を相手に「日本国憲法改正草案」を発表した。

 政権奪還後は、「国防軍」保持などの条文を持つ「改正草案」に代えて、4項目の「条文イメージ(たたき台素案)」をまとめ、改憲の呼び水として自衛隊の明記、緊急事態対応、合区解消・地方公共団体、教育充実―を示した。TFは4項目のたたき台素案に沿った国民運動を行う。

 が、憲法をめぐる運動では、戦後伝統的に護憲派が強く、今なお共産党や旧社会党の流れを汲(く)む勢力を支持する「九条の会」など、護憲派集会・デモなどへの動員力が目立っている。

 敗戦の結果、日本を占領した米軍の力で現憲法は制定されたが、護憲運動は左傾化し反米反戦反安保反核の各運動とも重なってきた。共産と立憲民主党との野党共闘の橋渡しをした「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」の運動とも重なっている。

 また、護憲派の主張はシンプルで、教科書で現憲法体制を教育されてきた国民に対して「憲法を守ろう」の一言で済む。改正の必要を唱えるTFは難攻不落の牙城に挑むようなものだ。

 さらに別の難題は、歴代の自民党政権が行った憲法解釈が壁となって立ちはだかることだ。集団的自衛権行使を一部容認した2015年の安保関連法制定時の反対運動では、共産党さえ集団的自衛権の行使を禁じた過去の政府憲法解釈を逆手に取った。

改憲タスクフォース、国民投票の実現へ運動

オンライン審議導入などをめぐり各会派が意見表明した衆院憲法審査会。中央は森英介会長=17日午前、国会内

 最近の例では衆院憲法審査会の自由討議で議論に上っている「オンライン国会」だ。新型コロナウイルス感染拡大は国会議員の集団感染の可能性もはらんでおり、議員が国会に登院できない場合を想定。自民としてはたたき台素案のうち緊急事態対応の条文化の狙いがあろう。

 しかし、連立を組む公明党、野党の日本維新の会、国民民主党は「解釈」で可能という立場だ。公明は衆院憲法審査会でのオンライン国会の議論は推進するものの、同審査会に出席した北側一雄副代表が「『例外的に一定の条件の下で、オンラインを活用し、議事を行い、議決することは憲法上も可能と考えるべきだ』と主張した」と、公明新聞11日付で報じた。

 「自由民主」では、6日に岐阜県で行われたTFで講師を務めた古屋氏が、「憲法改正を実現できるのは主権者である国民であり、国民投票に参画する機会を奪っているのは、ある意味で立法府の不作為だ」と強調したと伝えている。確かに国民主権を現憲法の基本原則とするならば、最高法規に携わることができてこその主権者であろう。

 国民の国民投票の機会を奪うのは、国会で頑迷に改憲に反対する勢力、および改憲発議をやらず「解釈」で済ませてしまう国会の戦後長く続く“因習”だ。これを今後、自民がTFを通じて脱却の突破口を開くことができるか焦点となる。

編集委員 窪田 伸雄