「近代政党のルール」へ改革、茂木幹事長が音頭
「自由民主」に岸田色、言外に潜む従来の運営批判
自民党は26日に政権復帰から9年を数え、来年以降の10年を超える長期政権が見通せる地点にある。だが、長期化は政権のほころびや有権者の飽きも避けられない。岸田文雄首相は、総裁選の疑似政権交代効果を得て公約の訴求力を保ち、政権浮揚を図らなければならない運命にある。
「新しい資本主義」「田園都市構想」など、自民党機関紙「自由民主」も見出しに岸田色がにじむようになった。中でも党の要である茂木敏充幹事長が首相が推進しようとしている党改革の音頭を取っている。
まさに自民党の在り方に関わる改革だが、岸田氏は総裁選で党のガバナンスコード(統治指針)策定などの党改革を訴えた。同紙11月30日付は「茂木敏充幹事長インタビュー」を掲載。「まず、国民との距離を縮め、また国民の期待する政策の実現によって、信頼をさらに高めていく」と述べ、「党役員の任期制限をはじめとする人事の在り方や、政党のガバナンスなど、近代政党としてのルール作りも検討」すると訴えている。
与党機関紙であり、これまでの党運営がどうのと直接的な批判はないが、言外に意味ありだ。
茂木氏が党改革について言及した「近代政党としてのルール作り」は、古い党体質が残ることを前提にした表現だ。また、「今回の選挙では、当選4回以下の党所属衆院議員の割合が5割を超えて」おり、「『ポスト55年体制』の時代に入っている」と強調している。
「デジタル社会の到来」「次の時代を先取りする自民党を作っていく」との未来志向もあるが、1955年社会党左派右派統一、保守合同による自民党結党の「55年体制」は派閥政治全盛期の時代で、「密室政治」、国民感覚と乖離(かいり)した「永田町の論理」に批判を呼んだが、その脱却は未完との認識が込められていよう。
当然、前政権までを踏まえた反省も含まれていると考えられ、想起せざるを得ないのは、公職選挙法違反による河井夫妻逮捕事件である。岸田首相の選挙区もある広島県で2019年参院選に当時の党本部が河井克行元法相の妻・案里氏を、地方組織が決めていた岸田派の溝手顕正氏の公認に加えて公認。溝手氏は落選し、案里氏の初当選も公職選挙法違反で夫婦とも逮捕され無効となり、事件から党本部が河井陣営に支給した額が1億5000万円だったのに対し、溝手陣営には1500万円と大差があったことも明るみになった。
事件は自民党にダメージとなり、菅義偉政権下での4月国政補選・再選挙ほか衆院選の前哨戦と位置付けられた主要選挙で、参院広島選挙区再選挙はじめ厳しい結果となった。最近では新潟県連を揺るがす「裏金問題」が喧しい。
党改革実行本部の立ち上げは同紙インタビューでも言及され、12月14日号には茂木氏が本部長を務める「党改革実行本部が初会合」の記事が載った。茂木氏が「『党役員の任期制限や人事の在り方、政党のガバナンスといった近代政党にふさわしいルール作りなどについて、具体的議論を進めていきたい』と決意を語り、党運営の基本的な原則を定める『ガバナンスコード』について外部有識者を含めたワーキングチームを設置し、具体的検討に着手する考えを表明した」と報告している。
ただ、岸田首相は岸田派の領袖、茂木幹事長は竹下派を継承し茂木派の領袖となった。派利派略のない透明性を確保したガバナンスコード、ルール作りで新しい自民党を描く党改革が実現できるかどうか。参院選決起ともなるであろう3月の党大会の決議案にどう盛り込まれるか正念場だ。
編集委員 窪田 伸雄






