猪瀬氏辞職に自民が決定打

「自由民主」都知事追及、東京都版で「徹底追及」宣言

 自民党の機関紙「自由民主」(12月24・31日号)東京都版は、最終ページのカラー刷りで同版を載せる目立つ扱いだった。火曜日発行の同紙は17日に発行されたことになるが、扱われているのは5日の東京都議会定例会代表質問での宇田川聡史都議会自民党政調会長の質問。「猪瀬都知事の説明責任追及へ」「総務委員会で徹底追及」の見出しだ。

 猪瀬直樹都知事は19日、医療法人「徳洲会」グループから5000万円を受け取った問題で、辞職を表明した。「私的な借用」として、当初は辞職を否定して乗り切る構えだったが、「疑念を払拭(ふっしょく)するには至らなかった」(猪瀬氏)。疑念を払拭できなかった場が都議会総務委員会だ。また、「都政を停滞させるわけにはいかない」(同)のが辞職の理由だった。

 同紙発行時点で既に総務委員会質疑は行われており、ニュースは一般マスコミに追いつかないが、同党が猪瀬都知事への「徹底追及」を機関紙上で宣言したことが重要であろう。18日、党中央から猪瀬氏に引導を渡す発言が出た。高村正彦党副総裁が早期辞職を促す発言をした。また同日、安倍晋三首相と石原慎太郎前都知事(日本維新の会共同代表、衆院議員)が会談する動きが出た。猪瀬氏は19日の記者会見で、石原氏から17日に辞職を勧められたことを認めている。

 同記事によれば、都議会代表質問では「知事の答弁を求めない異例の対応を取った」(リード)とし、5日の宇田川氏の代表質問で「わが党は、今日、明日の代表・一般質問で知事に発言を問うても一方通行のやりとりでは、都民の理解を得ることは困難だと考える」と対決の構えを示し、同党は「9日に一問一答で行われる総務委員会で知事の疑惑を追及することを表明」(リード)することになる。9、10、16、17日の4回開かれた総務委員会での猪瀬都知事の食言に議会側は審議を打ち切り、百条委員会へと事態は動いた。

 この過程から、猪瀬都知事には知事を支えぬく知事与党がなかったこと、特に都議会最大会派の自民が「異例の対応」をとって対決を打ち出したことが致命傷となった。同紙の代表質問記事には、「新国立競技場建設に対する出資、北区の産業技術研究センター跡地問題、大会組織委員会の『ボード』と称する人事など、都議会に対しては、報告すら一切なされないまま、突然発表された」など、「独善的ともとれる言動は、議会軽視につながる恐れがある」との批判がある。五輪によって実績を積みたい政党側の不満もあろう。

 石原都政下で長く副知事として都の行政中枢に位置し、昨年の都知事選では433万8936票の史上最多得票で当選し、東京五輪招致も実現した猪瀬都知事だが、議会与党との冷たい関係が裏目に出たあっけない幕切れである。

解説室長 窪田 伸雄