公明党の軽減税率、選挙公約の面目が立つ
隔たり超えた安保・税制
自民・公明の与党政策責任者会議が16日に開かれ、2016年度税制改正大綱を決定した。焦点は公明党が昨年の衆院選で公約した「軽減税率」。公明党の機関紙「公明新聞」をネット版で追うと、「軽減税率」の記事が頻繁に載るが、自民党の機関紙「自由民主」は触れない。与党メディアにおいても温度差が大きいテーマだ。
当初の還付方式の財務省案は薄い内容だった。公明は対案を作り、官邸主導により自民党税制調査会長を変えて、「財源4000億円」の枠内で自公協議が始まり、軽減税率の対象範囲は生鮮食品、加えて加工食品、飲食店からの持ち帰り品、新聞…と広がり、12日の最終合意で財源も1兆円規模になった。
自民党税調や財務省の軽減税率への消極姿勢を打破したのは安倍首相の政治決断だが、公明とのこれまでとこれからの選挙協力、通常国会で逆風の世論にさらされた安保法制をめぐる借りを踏まえれば、政治的義理人情が働いてもおかしくない。今回の税制事案は安保事案と同じく自民と公明には隔たりがあったが、ともに自公協議で合意にこぎ着けた。ギブ・アンド・テイクがなければ連立は成り立たないだろう。
「公明新聞」(12・13)は斉藤鉄夫同党税調会長の一問一答を載せ、「公明党の主張が大きく反映されました。消費税増税に伴う負担の緩和を国民が実感でき、低所得者対策としての効果も期待できます。これによって、国民は『消費税が上がっても、生きていくのに必要な食料品は据え置かれる』という安心感を持つことができます」と評価。
また斉藤氏は、財源について「軽減税率導入に必要とされる1兆円規模の財源をどう捻出するかは、今後、与党で協議して詰めていきますが、公明党は軽減税率のために赤字国債を発行することは考えていません。あくまでも税制・財政全体の中で、安定財源をベースにして財源を確保していきます」と述べている。
他に、同氏がテレビ番組で語った記事を通して、対象品目を広げる意義について「痛税感の緩和」を指摘している(11・13)。確かに消費税増税は、個人消費を押し下げ景気の減速を招き、税収を減らしかねない。これは昨年4月の8%への増税でも明らかで、経済の好循環どころか悪循環になりかねないと本紙社説(10・3など)は懸念している。
財源確保の帳尻合わせをどうするのかは、「16年度末までに安定的な恒久財源を確保」との自公合意から来年度中の課題だが、節税・倹約が基本だろう。ただし「社会保障は削らず」が公明の主張だ。税率10%は17年度からだが、間に合うかどうかが難題だ。
一方、民主党機関紙「プレス民主」(12・18)は軽減税率を批判している。本来、民主党政権と野党・自公の3党で「社会保障と税の一体改革」関連法を通して税率を引き上げた消費税論議では、民主も3党協議を維持し政策反映のため発言権を発揮する資格はあるはずだが、共産党の後追いで「安倍政権の暴走」を叫ぶだけではセンスがない。責任政党へ回帰すべきだ。
解説室長 窪田 伸雄










