自民党の立党60年 「歴史・未来本部」で議論へ
「党の使命」に沿い理念作業
自民党の機関紙「自由民主」(12・8)は11月29日に行われた「立党60年記念式典」の紙面だが、7面に「歴史を学び未来を考える本部」設置――の記事が載っている。「立党の精神に立ち返り、未来を考える」の見出しとともに「設置の趣旨」「構成等(本部長・谷垣禎一幹事長、本部長代理・稲田朋美政調会長…)」をアナウンスしたものだ。戦後70年・立党60年を機に、自民党として歴史観、国家観、未来観などをさぐる理念的な作業を行う。
自民党の立党は1955年。当時の自由党と民主党の保守政党2党による保守合同で結党した際に「立党宣言」「綱領」「党の性格」「党の使命」「党の政綱」の基本文書を定めた。これに立党50年の05年に「立党50年宣言」「新綱領」「新理念」を定めた。また野党になった10年に「平成22年綱領」を定めている。
05年に理念作業を行うまでは、基本文書から50年の間がある。衆院中選挙区制時代、結党後の実際は“派閥あって党なし”と言われ、総裁選で総理・総裁をめざす派閥領袖(りょうしゅう)の発言の方が議員への影響は強かった。これが変化したのは、小選挙区制導入で党営選挙になり党が強くなったことが大きい。10年の綱領見直しは、野党に転落し資金やポスト人事による求心力が弱くなっての自民党とは何かの問い直しだった。
今回は安倍晋三首相の戦後70年談話は政府のものであり「政府だけが歴史を振り返る義務を負うわけではない」として、立党経緯を含めて「歴史を学び未来を考える」という。
「趣旨」から一部を引用する。
「日本は開国と明治維新を経て、日清・日露の戦争から第二次世界大戦に至る激動の歴史を経験した。そして、日本政治の担い手であるわが党の先人たちは、敗戦占領下の施策や戦後の厳しい国内・国際情勢等に並々ならぬ危機意識を抱くことで保守合同を成功させた。その歴史的基盤の上に今日のわが党は立脚している。21世紀の今日に、この流れを客観的事実に基づき改めて理解する営みは、日本が歴史の選択で何を間違えたのか、何が日本の議会制民主主義と政党政治を機能停止に追い込んだのか、そして敗戦により何が変化したのか、占領期間中に得たものと失ったものは何か、占領政策は戦後体制に如何なる影響を与えたのか、などの重要な問題に改めて光を当てることになる。これらの理解は立党時に記された『党の使命』の趣旨に沿ったものであり、こうした目的に資する『本部』を本年に設立することには大きな意義があると言えよう」。
これに、マスコミによっては「歴史修正主義」(東京新聞11・21)の見出しで批判的に扱う。が、党内の議論は首相談話ほどの影響はないことから、党益を踏まえた営みに理念作業の意味があろう。民間では経営理念の共有により社員のモチベーションを上げて組織力を引き出そうという研修も盛んだ。もっとも、この点で政党では共産党が「一強」。自民を含め各党は後れを取っている。
解説室長 窪田 伸雄






