共産党のパラドックス

左翼隠し目立つ「赤旗」/票は伸びたが党勢伸びず

 日本共産党の機関紙「しんぶん赤旗」に9日から「『しんぶん赤旗』小話」という連載が載った。党員に部数拡大を働き掛ける意図だが、同紙自身を語る「小話」で何を“売り”にしているかは、共産党をどう見せたいかを示すものだ。

 9日掲載の2回目は「“進化”する共同の新聞」というタイトル。何が「“進化”」かというと保守系の人物が同紙に登場するようになったことを指している。平尾道雄・米原市長のインタビュー登場から話を起こして、「実際、保守政治家の『赤旗』への登場はいまでは珍しくありません。2009年には、『赤旗』を長年の『宿敵』とよぶ野中広務・元自民党幹事長が本紙インタビューに応じ、平和への思いを熱く語りました(6月27日付)…『宿敵』の登場は…大反響をよび、衝撃を広げました。13年には古賀誠・元自民党幹事長が日曜版6月2日号で…」と続き、「安倍政権の独裁的暴走のもと、国民共同の新聞は“進化”を続けています」と結んでいる。

 共産党は意図的に保守系政治家や政府関係者を機関紙に登場させることで、保守層の切り崩しを狙ってきた。ただ、「いまでは珍しくない」ほど登場させる傾向は、安保法制への反対運動をめぐって拍車がかかった。保守系の人物の登場が選挙で浮動票の獲得に有利になるからこそ、積極的にアピールしている。

 一方で「左翼」は売り言葉にしなくなった。左翼隠しを強めたといえる。かつては「左翼」としての自負心が強く、反自民で競合する党派(旧社会党など)に対して「右転落」という批判を繰り返し、他の共産主義諸派を「ニセ左翼」と呼ぶなど「左翼」の正統性を争っていた。

 ところが、今は「一点共闘」で保守層へのアピールに躍起だ。保守登場を機関紙の売りとする「右転落」ならぬ「“進化”」を遂げたというのだ。民主党が凋落(ちょうらく)する一方で確かに2013年6月の東京都議選以来、批判票を取り込み各選挙で議席は伸びた。が、左翼隠しのイメージチェンジで得た政権批判票は共産支持票とは言えず、党勢は回復しないようだ。

 同紙3日付に載った同党中央委員会書記局が2日に発した「党勢拡大の飛躍的前進、12月目標の総達成を」という文書を見ると、「最も遅れた分野・党建設の打開を本気で」と辛辣(しんらつ)な調子の小見出しを打ち、「率直にいって、今年の党の政治的前進に対して、党建設は最も遅れた分野となっています」と書いている。

 党勢拡大は党員と機関紙読者で計られるが、「11月の結果は、党員拡大は468人が入党を決意」したが、「読者拡大は日刊紙411人減、日曜版1675人減と2カ月連続後退」(同文書)という。ちなみに10月は「日刊紙が1109人減、日曜版が2607人減」(同紙11・3)。党勢は党財政に直結するので「財政部」が党費と機関紙購読料の集金にはっぱをかけてもいる(12・10)。

 夏の反安保法制デモの上げ潮が引き始めている。これを「国民連合政府」の話題で食い止めようと同党は必死である。

解説室長 窪田 伸雄