自民の120万党員運動 党勢挽回途上の政権3年

「自由民主」に組織本部長

 自民党機関紙「自由民主」(11・30)は山口泰明党組織運動本部長へのインタビューを1面に載せた。「1億総活躍社会」を新たに掲げる安倍政権を支える「党の組織基盤をさらに強化していく必要がある」(リード)との認識からだ。

 党勢拡大の活動方針を問われた山口氏は、「各級選挙で、いかなる逆風が吹こうとも、それに耐えうる強靭な組織を構築していかなければなりません。その一つが党員獲得運動」と指摘し、平成26年(2014年)からスタートした「120万党員獲得運動」について「2年かけて目標を達成するもので、本年は総仕上げの年」であり「厳しい目標ですが、残りわずかの期間、強力に運動を展開していきます」と決意を語っている。

 自民党の4月の発表では14年末の党員数が前年比15%増の89万6984人で、政権を失ったときの党員数を回復していない。08年の党員数は約106万人、政権を失った09年の末には100万人を割った。12年9月の総裁選では党員数が78万9348人だったことから、民主党政権下の野党時代に約20万も党員を減らす退潮ぶりだった。

 12年末に政権復帰し安倍政権も3年を経たが、党勢挽回はまだ途上にある。衆院選、参院選で大きく議席は伸びたが、党基盤は下野に至る斜陽期よりも弱く、議席は浮動票により支えられた割合が多い。

 政権に就いているゆえに加えられる批判も3年もすれば増える。理解が進まない安保法制、農政批判をもたらす環太平洋連携協定(TPP)合意、消費税増税の負担感や芳しくない経済指標、少子高齢化時代の社会保障問題などだ。難題を前に宮城、福島の県議選では議席が1~2減し、伸び悩んでもいる。

 果たして、「120万党員」は達成できるのか。前年比15%増のペースが継続しても約103万人。120万には約34%増と倍以上でなければ届かない。

 同紙の「党勢拡大には団体対応も重要」との問いかけに、山口氏は「団体総局の15関係団体委員会が実働部隊となります」「政務調査会と協力し、予算や税制などの政策懇談会を開催し、協議会加盟団体の要望を丁寧に受け止めていく」「新規産業や成長分野で一定の組織力がある団体に対しても連携を働きかけていく方針」と、述べた。

 自民党組織運動本部には団体総局、地方組織・議員総局、女性局、青年局、労政局、遊説局の6局があるが、団体総局は法務・自治委員会、財政・金融・証券委員会…など15の委員会がある大所帯。各委員会が関係する諸団体を訪問し党勢拡大を図るという。

 さらに、「近年の賃上げ状況も、政府・与党が全力を挙げて取り組んだ成果…。…今後も労政局を通じて、じっくりと腰を据えて、連合をはじめ労働組合との付き合いを進めていきたい」と述べ、野党の基盤である労組まで視野に置いた。

 選挙区支部長の国会議員らにも1000人の党員拡大ノルマがあるが、最後は“団体戦”になりそうだ。

解説室長 窪田 伸雄