大阪維新勝利、対立超え「新たな設計図」を


 任期満了に伴う大阪府知事と大阪市長のダブル選は「大阪維新の会」の候補がいずれも制した。これで5月の住民投票で頓挫した「大阪都構想」が息を吹き返す。

 しかし、これをもって全面的に信任を得たと考えるのは早計だ。低投票率は市民の戸惑いを象徴している。「不毛の対立」が続く限り、大阪の再生はあり得ない。

 自共のタッグに違和感

 橋下徹大阪市長の掲げる「大阪都構想」は、大阪市を廃止して特別区を設置し、市の業務のうち広域行政は府に、身近な行政は特別区に振り分けて府と市の二重行政を解消するというものだ。

 だが、非維新側から大阪市の廃止や特別区設置に膨大な費用が掛かるなどの疑問が出され、5月の住民投票では僅差で否決された。これを受けて今回のダブル選で橋下市長は「都構想をバージョンアップする」とし、都構想の「新たな設計図」作りを公約に掲げた。維新の勝利は都構想の新たなビジョン提示の条件付き支持とも言える。

 市長選の投票率が前回や住民投票を大きく下回ったことを維新は真摯(しんし)に受け止めておくべきだ。関心が薄い低投票率ではなく、都構想の是非の判断を保留した市民が少なからずいたということだろう。

 背景には維新と非維新の「不毛の対立」がある。二重行政の解消や成長戦略では維新と自民党の考えに大きな違いはなかった。憲法や安保政策でも一致点が多い。それにもかかわらず、共産党とタッグを組んだ自民党に違和感を抱かされたという声が保守層から多く聞かれた。

 もっと大局に立った判断が安倍政権や自民党に必要ではなかったか。都構想は現行の地方自治の枠組みに間違いなく一石を投じた。安倍晋三首相の掲げる地方創生や一億総活躍政策にも深く関わっている。

 現在の地方自治は基礎自治体(市町村)と広域自治体(都道府県)の二層構造から成り、住民サービスはより身近な基礎自治体が担う。それにはサービスに応じられる規模が必要とされ、「平成の大合併」によって市町村数はほぼ半減した。

 その一方で、広域自治体は地方分権とも絡み、論議が錯綜(さくそう)してきた。同論議では道州制導入を前提に基礎自治体を強化する道州-市町村の二層構造も描かれてきた。

 少子高齢化・人口減が急速に進む中で、大都市をどう再生させるのか。このことは国家的課題である。旧態依然の体制に甘んじているわけにはいかない。

 橋下氏は都構想とともに「関西広域連合」にも力を入れてきたはずだ。将来、関西州を設置し道州制に移行しようとの考えもあった。これで政界引退というのは無責任過ぎないか。

 第三極再生の使命も

 安倍首相は維新と自民党の関係修復を図り、地方創生の視点から都構想を頓挫させず、軟着陸を模索すべきだ。橋下氏は野党の左傾化に歯止めを掛ける第三極の再生という使命もあるのではないか。

 いずれにしても大阪再生を目指すには「新たな設計図」作りが不可欠だ。

(11月23日付社説)