積極的平和主義で国際貢献を
安倍晋三首相は一連の国際会議に臨み、多くの首脳会談でも意見交換を行った。今後も積極的平和主義に基づく国際貢献への決意を示すとともに、日本の立場に理解を求めていかねばならない。
人工島に「深刻な懸念」
トルコで開かれた主要20カ国・地域(G20)首脳会議では、直前に発生したパリ同時多発テロを受け、安倍首相は「暴力的過激主義を生み出さない社会の構築が重要だ。各国の水際対策強化などを支援し、テロを未然に防ぎ、根絶させるため、積極的に取り組む」と述べ、国際社会と連携してテロ対策に取り組む考えを表明した。
G20ではテロリストの資金源遮断に取り組むことを明記した対テロ声明を採択し、パリ同時テロを最も強い表現で非難して「テロと戦う連帯と決意」を確認した。日本も各国との情報交換とともに情報収集力の強化に努め、テロとの戦いに協力する必要がある。
一方、安倍首相はマレーシアでの東アジアサミットで、中国の南シナ海での人工島造成や軍事拠点化に「深刻な懸念」を表明。「国家は国際法に基づいた主張をし、力や威圧を用いず、紛争解決には平和的収拾を徹底すべし」と法の支配の原則順守を呼び掛けた。中国が人工島を軍事化する意図がないと説明していることに対しても「言葉には具体的な行動が伴わなければならない」とクギを刺した。
南シナ海問題では、ASEAN全体で一枚岩とは言えない。中国の切り崩しも強いものがあった。中国の王毅外相はフィリピンでのアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の前に訪比し、この問題が主要議題とならないよう予防線を張った。安倍首相は今後も米国などとともに中国を牽制(けんせい)する姿勢を前面に出すことで、日本の立場を明確にしなければならない。
中国は東シナ海でも強引な海洋進出を続けている。米議会の超党派諮問機関「米中経済安全保障再考委員会」は、2015年版の報告書を発表した。報告書は、中国が尖閣諸島(沖縄県石垣市)の周辺海域で「軍事、民間の両面でプレゼンス(存在)を静かに増強し続けている」と警鐘を鳴らし、公船による巡回、空軍の航空機による偵察、東シナ海の日中中間線付近でのガス田掘削施設建造などを具体例に挙げた。毅然(きぜん)とした対処が求められる。
今回の外遊で安倍首相は、米国をはじめ、トルコ、オーストラリア、インドネシアなど多くの首脳との会談を行った。オバマ米大統領との会談で、首相は「南シナ海での自衛隊活動は、情勢が日本の安全保障に与える影響を注視しつつ検討する」と明言した。
フィリピンのアキノ大統領とは、日本からの技術移転を可能にする防衛装備品移転協定について大筋で合意。インドのモディ首相との会談では、中国の海洋進出に対する懸念を共有し、日本、インド、米国の3カ国の海洋安全保障協力を進めることで一致した。
対中牽制を強化せよ
安倍首相は来月、インドを訪れる。両国は連携して中国への牽制を強化する必要がある。
(11月24日付社説)